サラリーマンなどが行う年末調整や確定申告で、妻のパート代や子供のアルバイト代が一定額を超えているのに申告せず、扶養控除の対象になると誤った申請を行い、国税当局から是正を求められるケースが相次いでいることが25日、分かった。国税庁によると、こうした扶養是正は昨年6月までの3年間に全国で約63万件に上り、是正を求められ、企業や個人事業者ら雇用主が納めた源泉所得税の追加納付額は約196億円に上るという。多くは単純ミスだが、その背景に「家庭内の会話不足」があるとの指摘もある。
◆近畿4万件
近畿でも同様のミスが多い。大阪国税局によると、近畿では昨年、約53万の会社や個人事業者、役所が源泉徴収義務者として年末調整を行っているが、ここ数年、4万件を超える扶養是正が行われており、一向にミスが減らないのが現状だ。例えば、夫がサラリーマンの場合、家族の年間所得は38万円(給与収入なら103万円)以下でないと所得が控除されない。
雇用主は、1年間の所得税の過不足を年末調整で精算するが、従業員から提出された申告書に基づいて計算するため、夫が家族の収入を把握していないケースは、雇用主がミスに気付きにくい。国税当局は妻のパート先などが市区町村に提出している給与支払報告書などを基に、家族の収入が控除対象かどうかをチェックしているという。
◆バレない?
なぜミスが起きるのか。最も多いのは、妻のパートや子供のアルバイトの所得が控除対象となる限度額を超えているのを知らずに夫が申請するケースだ。春は進学に伴いアルバイトを始めるケースも多く、注意が必要。国税関係者は「日頃会話の機会がなく、そんなに稼いでいると知らなかった、というケースや、妻がへそくり感覚で正しい収入を夫に告げないケースもある」と指摘する。また、給与の年間収入が103万円を超えても「そんなに多くないからバレることはないだろう」と安易に考える人もいるという。
11月の年末調整や確定申告の時期に、各税務署では事業者を対象にした説明会を開き、注意すべきポイントをPRしているが、「扶養控除については、やはり当事者である家族間でしっかり話をしてもらわないと…」(国税関係者)というのが本音だ。ほかにも、共働き夫婦だと一方しか申請できない子供の扶養控除を誤って二重申請するケースや、インターネット株取引収入や生命・損害保険の満期払い戻しがあるのに控除を申請する単純ミスも多い。
◆悪質な例も
扶養是正を受けてもペナルティーはなく、大阪国税局は「間違いに気付いたらすぐに報告して」と呼びかける。ただ、仕組みを悪用した税逃れをする事例もある。他人名義で給与を受け取って故意に年収を低くする▽離婚した元夫・妻や内縁関係の夫・妻を配偶者として控除申請する-など。人手不足の中小企業が収入を低く抑えたい従業員に、より多く働いてもらうため、会社ぐるみで他人名義で給与を支給し、税務署に虚偽報告したこともあった。同国税局は「調査で、故意に控除を受けたことが分かった場合は、厳正に対処する」としている。
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