高齢者の転倒の要因には、バランス能力と体を支える筋力の低下がある。「とっさの一歩」を踏み出して転倒をくいとめることのできる体づくりが重要。効果的な運動を紹介。
1.転倒は主に2つの要因で起こる
冬は路面が凍って滑りやすい季節です。特に高齢者の転倒は、日常生活に大きなダメージを与えます。転倒は主に、つまずいたりぐらついたりしたときに素早く体を立て直すための「バランス能力の低下」と、バランスを崩したときに「とっさの一歩が出ない」という2つの要因で起こります。前方に転倒したときには手首・足首の骨折、側方に倒れると肩や太ももの骨折、後方へ倒れると頭部の損傷や背骨の圧迫骨折などを起こす危険があり、命に関わることもあります。予防のために、家の中でも続けられるバランス運動を行ってバランス感覚を鍛えたり、階段の上り下りや掃除・洗濯など、日常生活の動作をしっかり行うように心がけ、転倒を未然に防ぎましょう。
2.転倒を運動で予防しよう!
注意!
・運動器に痛みがあれば担当医に相談する
・室内では滑らないよう、なるべくはだしで行う
・いすは安定しているものを使用し、平坦で滑らない場所に置く
●前方への転倒を予防する運動 ※5秒間×5回
すね(弁慶の泣き所)の横にある前脛骨筋[ぜんけいこつきん]の筋力が低下すると、つま先が上がらず少しの段差でもつまずきやすくなります。この筋力をつけると、とっさの一歩も素早く踏み出せるようになります。
(1)いすの座面のへりに両手を添えて座り、両足は肩幅ほどに開く
(2)かかとは床につけたまま、両足のつま先を天井へ向けて持ち上げる
(3)小さい声で5秒数え、足をゆっくり戻す
●側方への転倒を予防する運動 ※2~3m×3回
足の指やすね、ふくらはぎの筋力が弱くなると、バランスが崩れたとき、瞬時に体制が立て直せず、転倒につながりやすくなります。特に女性は足指の筋力が低下しがちなのでお勧めです。
(1)目印になるテープや畳のへりに沿って、まず片足を置き、つま先にもう一方の足のかかとがぴったり付くように置く
(2)これを交互にゆっくり繰り返し、足の指で床をつかむように直線上を2~3m進む
不安な人は...
壁や手すりの近くで行うとよい
●側方・後方への転倒を予防する運動 ※交互に10回ずつ
バランスが崩れたとき、前後左右どの方向にもとっさの一歩が踏み出せるようにすることで、転倒を予防できます。
(1)足をそろえた状態から、右横へ一歩素早く踏み出し、元に戻す
(2)左横へ一歩素早く踏み出し、元に戻す
(3)足をそろえた状態から、素早く右脚を一歩後ろへ引き、元に戻す
(4)左脚を素早く一歩後ろへ引き、元に戻す
(5)これを繰り返す
慣れてきたら...
・右前や左前などさまざまな方向へ踏み出す動きを取り入れてみる
・歩幅を徐々に広げ、踏み込むときに体重をかける
・家族や友人に「右横」「左後ろ」などと指示を出してもらい、ランダムに方向を変えて行ってみる
NHK「きょうの健康」2014年1月30日放送分
http://news.goo.ne.jp/article/kenkotoday/life/kenkotoday-20140130-h-001.html