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社会保障改革 消費増税を制度安定の契機に(1月8日付・読売社説)

◆医療・介護費の抑制は不可避だ

社会保障と税の一体改革の柱として、4月に消費税率が5%から8%に引き上げられる。増税分は全額、社会保障に充てられる。

今年を安定した社会保障制度の実現に向けた出発点としたい。

急速な高齢化と働く世代の減少により、日本の社会保障制度は揺らいでいる。

約50年前には、10人の現役世代が1人の高齢者を支えていた。だが、今は2・4人で1人の「騎馬戦型」だ。2050年頃には、現役世代1人が1人の高齢者を支える「肩車型」社会が到来する。

◆次代につけを回すな

増え続ける年金、医療、介護費用の財源は、国債など借金に大きく依存し、国の財政悪化を加速させる主因になっている。将来の世代への負担のつけ回しをこれ以上、放置できない。

消費増税によって、基礎年金などの財源をひとまず確保できる。社会保障制度の持続可能性が高まることは一歩前進である。

増税分は、在宅の高齢者を支える医療と介護の連携体制の構築や、国民健康保険の保険料軽減などにも充てられる。

一連の改革は、2015年10月に予定される消費税率10%への引き上げが前提となっている。社会保障制度を強固にするには、景気の動向を見極め、税率8%からの再引き上げを着実に実施することが課題となる。

ただ、消費税率を10%に引き上げても、増大する社会保障費のすべてを賄うことはできない。

安定した社会保障制度を実現し、財政健全化を図るには、医療、介護、年金の給付費抑制は待ったなしである。

特に問題なのは、医療費の急増だ。政府が来年度の診療報酬の改定で実質的な引き下げを決めたのは適切な措置と言える。

医療を効率化し、無駄を省くことも欠かせない。

複数の病気を持つ多くの高齢者が、いくつもの医療機関にかかり、検査や投薬を重複して受けている。医療費の無駄遣いであるばかりでなく、薬の副作用により、かえって体調を悪化させているケースも少なくない。

健康保険組合などの保険者は、電子化が進むレセプト(診療報酬明細書)の点検を徹底し、患者に重複受診の是正を促すべきだ。

16年に創設される共通番号制度(マイナンバー)も活用したい。当面は納税や社会保障給付の手続きに使われるが、診療情報に利用範囲を拡大すれば、重複受診・投薬の防止に役立とう。

現役世代の負担を軽減するため、経済力のある高齢者に相応の負担を求めることも不可避だ。

◆過重な現役世代の負担

70~74歳の医療費の窓口負担が4月、法定の2割に引き上げられる。高齢者の反発を恐れ、政府は08年以降1割に据え置き、穴埋めに巨額の国費を投入してきた。引き上げは当然の措置である。

介護保険サービスでは、高所得者を対象に、自己負担率を現在の1割から2割に引き上げる。制度維持のためにはやむを得まい。

担い手となる現役世代の減少をどう食い止めるか。社会保障制度を将来にわたって安定させるには、この視点も不可欠だ。

1人の女性が生涯に産む子供の数を示す合計特殊出生率は1・41にとどまり、昨年の出生数は過去最少だった。人口減は最大の24万4000人に達し、今後一層、加速する。若者の結婚、育児支援に力を入れる必要がある。

働きながら子育てできる環境を整えるため、保育所の待機児童解消など、政府は幅広い少子化対策を講じてもらいたい。

非正規労働者の増大も懸念材料である。所得が低く、税や社会保険料の納付額が少ないからだ。非正規雇用の待遇改善を図ることも求められる。

◆自公民協議を推進せよ

社会保障制度を巡る問題は山積しているが、改革を進める政治の動きは鈍い。

消費増税を柱とする社会保障と税の一体改革は、民主党政権時代に自民、公明、民主3党の合意で決定された。

だが、昨年8月、社会保障制度改革国民会議の報告書がまとまった際、民主党は自らの主張が反映されていないことを理由に、3党協議から離脱した。

その後、協議に戻ることを表明したが、議論は停滞している。3党合意を主導した民主党は、協議の進展に協力すべきだ。

どの党が政権を担っても、社会保障制度の改革は避けて通れない重い課題である。

(2014年1月8日 読売新聞)

http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=90618

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