世界中で大ヒットしたビジネス書『7つの習慣』の著者スティーブン・コヴィー博士の理論をベースにフランクリン・コヴィー社が、“卓越した生産性”の実現に特化した新メソッドを開発。あなたの人生を左右する「選択の瞬間」とは──。
■1日に送受信するメールは平均110通
「5つの選択」とは「卓越した成果」を生み出すための知識とスキルと動機を獲得し、「卓越した生産性」を実現することを目的としたプログラムである。それが生まれた背景には、人間を取り巻く環境の大きな変化がある。
私たちは今、かつて経験のない時代に突入している。情報技術の急速な発展で、どこでも誰とでも連絡が取れるようになり、人類が蓄積してきた多くの知識や情報に容易にアクセスできるようになった。昔は想像もつかなかった卓越した成果を創出できる可能性が高まった。
ところが、現実は大きく異なり、「生産性のパラドクス」と呼ばれる問題が起きている。企業や政府は情報技術に莫大な投資を行ったが、少なくとも労働者の毎時生産量という従来の尺度で見る限り、生産性が大きく伸びることはなかったのだ。確かにデジタル革命は多くの仕事のプロセスを一変させたが、人間そのものの生産性を向上させはしなかったわけだ。
その理由は、現在の「知識労働」は過去の「工業労働」とは根本的に異なるのに、私たちはまだ工業時代の考え方にとらわれていることにある。
工業時代の労働者は組み立てラインで機械に部品を取り付けるような単純作業を繰り返していた。意思決定が必要な場面はごくわずかで、その裁量の幅は狭く、価値は低かった。使う道具もシンプルな使用方法しかなかった。
一方、現在は優れた知識やアイデアが基盤となる「知識社会」に突入している。知識労働者は新しいアイデアを創出したり、人々を説得し動かしたりして成果を生み出す。工業時代に比べ、知識時代の労働者ははるかに多くの選択肢を持っている。たとえば「この電子メールにどう返信するか?」「このプロジェクトとあのプロジェクト、どちらに参加するか?」等々。また、複雑な意思決定が求められ、それが組織に価値をもたらす。個々の営業マンが時間の使い方をどう決めるかで売り上げには大きな差が出るだろう。
加えてウェブやメール、SNSといったデジタルテクノロジーがもたらした新たなツールは複雑で、生産性を飛躍的に向上させる可能性とともに、職場に混乱を持ち込んでいる。
私たちの調べによると、平均的な知識労働者が1日に送受信するメール数は約110通。多くのコミュニケーションが可能になる一方で、さして重要でない案件に振り回されるようにもなった。メールや携帯電話の発達により緊急の割り込み案件も増え、現代の仕事はまさに中断に次ぐ中断である。やはり私たちの調べによると、平均的な知識労働者が1つの作業に集中できる時間は11分。1日のうちで不必要な中断とその埋め合わせに費やす時間は全体の28%である。つまり、卓越した生産性を実現する可能性を持った情報技術が発展する一方で、私たちは情報の雪崩のなかで生き埋めにされる危険に直面しているということだ。
どうすれば私たちは生き埋めにならず、卓越した生産性を実現できるだろうか。
工業時代において生産性を高めるためには、生み出せる成果(アウトプット)に対して、できるだけ投入した時間とコスト(インプット)を削ることが必要だと考えられてきた。しかし、現在の知識労働者がより付加価値の高い成果を生むには、単純にインプットを削るだけではいけない。重要な仕事に費やす時間やエネルギーまで削ってしまえばアウトプットの拡大もおろそかになってしまうからだ。
http://news.goo.ne.jp/article/president/bizskills/president_11655.html