- 登場人物
- 山田キョウコ(78歳) 主婦(一人暮らし)
- ワル井(40歳) 健康食品会社「○×食品」社員
- ヒデミ(48歳) 長男の嫁
ナレーション
ある日のこと、一人暮らしのキョウコさんの家に電話がかかってきました。
- ワル井:
- もしもし、○×食品のワル井と申します。山田さんのお宅でしょうか。
- キョウコ:
- はい、そうですが…。
- ワル井:
- 先日ご注文いただいた商品を、本日発送します。代引きで3万円のお支払いとなりますのでよろしくお願いします。
- キョウコ:
- えっ、商品?○×食品…?何のことですか?
- ワル井:
- 何をおっしゃっているんですか。健康食品ですよ。□月△日に3ケース、確かにお電話で注文いただいていますよ。「ひざが痛いのでちょうどよかった」って喜んでいたじゃないですか。
- キョウコ:
- えっ、健康食品?何を言っているんですか、頼んでいませんよ。
- ワル井:
- いえ、確かにご注文いただいています。忘れてしまったんですか?
いまさら注文していないなんて、ひどいですねえ。
- キョウコ:
- えっ…。そうだったかしら…。
- ワル井:
- たしかに注文は受けてますからね。お送りしますね。
- キョウコ:
- そんな困ります。…あっ、思い出したわ。□月△日は、孫の誕生日で息子の家に泊りがけで遊びに行っていたのよ。注文したなんて、ありえないわ。ウソをつかないでください。
- ワル井:
- (急に口調が変わって)ウソ??人をウソつき呼ばわりするなんて失礼じゃないか。この健康食品はあなたの症状に合わせてわざわざ作ったんだよ。こっちは注文を受けたときの録音もあるんだ。なんなら、裁判に出してもいいんだよ。
- キョウコ:
- さ、裁判!?裁判なんて、困ります。
- ワル井:
- こっちだって、そこまで話を複雑にしたくはないんだ。だけど、そっちが「注文していない」だなんて言うんだからしょうがないじゃないか。
- キョウコ:
- でも、頼んでいるはずないのに…。そうだ、録音しているならそれを聞かせてください。
- ワル井:
- …電話では無理だね。裁判で聞かせてあげるよ。
- キョウコ:
- そんな…。
- ワル井:
- 裁判になったらねえ、商品の代金以外にも裁判費用やら、いろいろ費用もかかるよねえ。商品を受け取ってくれれば、こっちもそんな面倒なことしなくて済むんだけどねえ~。
- キョウコ:
- …分かりました。送ってください。
- ワル井:
- 最初からそう言えばいいんだよ。実際注文受けてるしね。じゃあ、送るからね。
ナレーション
5日後、隣町に住む長男の嫁ヒデミさんがキョウコさんの家にやってきました。
- ヒデミ:
- お母さん、こんにちは。実家から野菜がたくさん送られてきたのでおすそ分けに来ましたよ。
- キョウコ:
- ああ、ヒデミさん。いつも悪いわね。台所に置いてくれる?
- ヒデミ:
- 分かりました。…あら、お母さん、健康食品を飲み始めたんですか?でも、まだ箱は開けていないんですね。お母さんが代引きで注文なんて、珍しいですね。
- キョウコ:
- 実はね、○×食品っていうところから電話がかかってきて、全く頼んだ覚えはないんだけど、「注文した」とか言って一方的に送って来られちゃって。飲む気にもなれず放っておいているのよ。
- ヒデミ:
- お母さん、注文していないんでしょ。そういうときはきっぱり断らなくちゃ。
- キョウコ:
- だって、注文のときのことを録音しているって言うし、「裁判」とか言い出すし…。けっこう怖い口調で言われて…。裁判なんて面倒だし、私も自分の記憶に自信がなくなってきちゃって…受け取れば済むと思って「送ってください」って言っちゃったのよ。
- ヒデミ:
- そんな…。でも、頼んだことを忘れてしまったってことはないんですよね。
- キョウコ:
- ええ。だって、注文した日は□月△日だって言うのよ。
- ヒデミ:
- 太郎の誕生日で、うちに来ていたじゃないですか。注文出来るわけないわ。
- キョウコ:
- そうでしょ。そう言ったんだけど、ぜんぜん聞いてもらえなくって…。
- ヒデミ:
- めちゃくちゃですよ!どうしたらいいかしら…そうだわ、消費生活センターに相談してみましょう。
- http://www.kokusen.go.jp/mimamori/mj_volunteer/mj-scenario20.html










