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佐渡の世界遺産候補 旧採鉱施設 崩壊の危機

国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産候補地で、昨年国の重要文化財に指定された佐渡市の「大立竪坑櫓(おおだてたてこうやぐら)」などの旧佐渡鉱山採鉱施設が、崩壊の危機にあることが判明した。佐渡市は新年度、有識者による委員会を設置し、修復保存に乗り出す。近代産業遺産の修復保存技術は世界的に未完成の分野とされており、関係者は佐渡金銀山を修復保存の先進モデルとして、世界遺産登録に向けたアピールポイントにしたい考えだ。(石原健治)

崩壊の危機にある国の重要文化財「大立竪坑櫓」

市などによると、佐渡金銀山の近代産業遺産は、昨年末に5か所が国の重要文化財に指定されたが、いずれも劣化が進んでいる。1877年(明治10年)に日本で最初に建造された西欧式の竪坑「大立竪坑」の櫓(高さ14・4メートル)と捲揚(まきあげ)機室は、鉄筋コンクリート全体が劣化し、鉄骨の一部は腐食して穴が開いている。また、金銀の増産を図った「高任粗砕場」も屋根が一部壊れて雨漏りが激しく、鉄骨も劣化。いずれも崩壊の危機に直面しているという。

近代以前の木造の文化財は緻密な調査研究を経て、建築時を踏まえた木材を使って補修などをしている。一方、歴史の浅い鉄筋コンクリートや鉄骨の建造物は崩壊をどのように防ぎ、保存していくのかは、専門家の間でも大きな課題となっている。時代によって材料が違っており、修復は一筋縄ではいかない。特に大立竪坑櫓は全体が劣化し、安全性を優先すれば、全て取り換えなければならなくなるという。修復してレプリカ同然とすると、文化財としての価値がなくなるというジレンマがある。

佐渡市の「史跡佐渡金山遺跡保存管理委員会」の委員長を務める木村勉・長岡造形大教授は「近代遺産は時代に応じて変貌している。大立竪坑櫓も木造だったが、改修されて最後は鉄骨造りとなった。どの時代の遺産をどのように修復保存するかが課題だ」と語る。

近代産業遺産は、科学技術と産業活動の進展を示す文化遺産の一つとして、1994年のユネスコ世界遺産委員会で保存・登録の方針が決まった。国内では、来年登録審査が行われる富岡製糸場(群馬県)や9月にユネスコ世界遺産委員会への推薦が決まった「明治日本の産業革命遺産」(福岡など8県)などが候補となっている。だが、産業革命遺産の構成資産の一つ、長崎市の端島炭坑(通称・軍艦島)は、コンクリート建築物などの完全な修復保存には100億円以上が必要との見方もある。

佐渡金銀山世界文化遺産学術委員会の小風秀雅委員長(お茶の水女子大教授)は「佐渡の近代遺産のように集約された遺跡で対策を示すことができ、世界的なモデルとなれば、世界文化遺産登録の重要な後ろ盾となる」と注目している。

佐渡市は、来年夏までに専門家で委員会を発足し、具体的な修復保存の方向性を明確にし、2017年の世界文化遺産登録に向けて活動を進めていく方針。

(2013年12月20日  読売新聞)
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