今年も残すところあとわずか、会社や仲間内で忘年会が開かれる時期がやってきた。だが、楽しい宴会のはずが、飲み過ぎて失態を演じたり、迷惑かけてしまうのは困りもの。お酒との上手な付き合い方を専門家に聞いた。(佐々木詩)
■適量は「個人の感覚」ではダメ
「自分の適量を知って飲みましょうといいますが、個人の感覚を当てにしてはダメなんですよ」。大阪市立男女共同参画センター(クレオ大阪)でアルコールに関する講座を担当している保健師の野村紀美子さん(63)はまず、指摘する。「日本人の適量は1日に純アルコールで20グラム程度といわれています。自分は飲めるほうだからといって、勝手に適量を増やしてはいけません」
純アルコール量20グラムとはどれぐらいか。国民の健康づくりの指標「健康日本21」によると、アルコール度数5%のビールなら、500ミリリットル飲めば20グラム摂取したことになる。15%の清酒なら1合、25%の焼酎なら100ミリリットルで20グラム前後となる。
野村さんは「宴会で1日の適量を超えるほど飲んでしまったら、その後数日は飲酒を避けるようにしてほしい」とアドバイスする。20グラムを代謝するためには4時間必要。酒量がもっと多ければ、睡眠中だけでは分解しきれず、翌日以降もアルコールが体に残った状態になる。胃のむかつきや気分がわるいといった二日酔い状態に陥り、場合によっては飲酒運転にもつながってしまうため注意が必要だ。また、厚生労働省は、肝臓が小さく、体重の軽い女性は、男性以上に負荷がかかるので、一日のアルコール量の目安は、さらに半分の10グラムほどを目安にするといい、と示している。
■空腹は×、小さいコップで飲む、空にしない…
アルコールの分解能力は個人で違う。アルコールは体内でアセトアルデヒドに分解され肝臓の「ALDH2」と呼ばれる分解酵素により酢酸に分解される。野村さんによると、この分解酵素の働きは遺伝的に決まっており、日本人の約4割が、働きが弱い「不活性型」とされ、活性が全くない「失活型」も約4%いるという。失活型は飲酒がまったくできないタイプだが、不活性型の人は習慣的に飲酒すると酵素の働きが高まり、飲める酒量は増えるが、飲酒を続けることで食道がんや大腸がんなどの発生リスクが高まるという。
さらに、アルコールの過剰摂取は肝臓だけでなく、脳にも影響を及ぼす。少量のうちは大脳に作用し、「ほろ酔い」気分でいられるが、酒量が増えると小脳に影響し千鳥足などの運動失調をきたす。脳全体に影響が及ぶと、呼吸中枢もまひするため、最悪の場合は死に至る。
必要以上に飲み過ぎないためには、いくつかポイントがある。野村さんは「空腹時は酔いが回りやすいのであらかじめ食事をしておく」「宴会では小さなコップで少しずつ飲む」「誰かに注がれないように、自分のグラスは空にしない」などの対策を勧めている。
■飲めない人は上手に断ろう
一方、酒が飲めない人は、宴席でどう振る舞えばいいのか。ホームページ(www.takarashuzo.co.jp/saynoweb/index.htm)で、「お酒おつきあい読本」を掲載するなど啓発活動を続けている酒造メーカー、宝酒造(京都市下京区)広報担当の坂口智子さんは「もちろん無理して飲む必要はありません。ですが乾杯だけは参加してみてください」と提案する。
乾杯後、酒はそのまま置いておき、ほかの飲み物を注文。もしお酒を勧められた場合は断ればいい。上司や取引先など断りにくい人であっても、「飲めない体質なので」「せっかく勧めていただいているのにすみません」など、やわらかいニュアンスで断ろう。
なお、「無理に勧めるのはアルコールハラスメントにつながります」。本人が気づかないようなら、周囲がたしなめるのも大人の宴席マナーといえそうだ。
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/life/snk20131215527.html