意外と知らない 制度の中身
会社員の正人さんは、「今年は、家族の入院や介護で出費が多かったなあ……」とため息。友人で税理士の直人さんに、税金の一部が戻る医療費控除制度について聞いた。
正人 払った医療費を確定申告することで税金が戻ってくると聞いたけど本当?
直人 今年中の家族全員の医療費負担が、10万円(所得が200万円未満はその5%の額)を超える場合、来年2月に確定申告をすれば、医療費控除により源泉徴収で払った所得税の一部が戻り、住民税も軽減されるよ。源泉徴収のない自営業の人も納税額が軽減される。
ただし、公的医療保険や保険会社などから補填ほてんされた額は差し引かれる。控除される額は年200万円が上限だ。
正人 どんな準備が必要?
直人 払った医療、介護費のレシートや領収書を保存しておくこと。薬局で買う市販薬も対象。何の治療のためにどの薬を買ったのかが分かるよう、レシートに書き込んでおくといいね。確定申告では、医療費の明細書とレシート類を添えて書類を提出する。
正人 交通費は?
直人 電車やバスの料金は控除され、領収書は必要ない。ただ、いつ、どの区間を乗り、いくら払ったか記録をつけておく方がいい。
正人 領収書をなくしてしまったら……。
直人 関係資料で支払いを証明すれば認められる可能性もある。振り込んだ通帳、受診したのがわかる診察券などが資料になる。
正人 今月、5万円の医療費を請求されたけど、年内に支払った方がいいのかな。
直人 12月に支払えば来年、来年1月に支払えば15年に申告することになる。今年の医療費が少なく、来年に多額の医療費を支払うと予想されるなら、年明け以降に支払って15年の確定申告で控除を受けた方が得になる場合もあるよ。
税金いくら 戻ってくる?
1年間に支払った医療費から、受け取った保険金などの額を引き、さらに10万円(所得200万円未満の場合は、所得の5%)を差し引いた額が医療費控除額。例えば、課税所得500万円の人が、年間50万円の医療費を支払い、保険金20万円を受け取ったとする。この場合、50万円から20万円と10万円を差し引き、控除額は20万円となる。
これに、税率をかけた分が、戻ってくる税金の目安となる。この例の場合、所得税率は20%なので、20万円×20%=4万円。(梅崎正直)
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