大腸の粘膜に発生し、大きくなったり徐々に外側へ広がったりする大腸がん。結腸がんは深く進行していない早期なら内視鏡切除が可能。直腸がんは肛門からの位置で治療の選択肢が決まる。
1.大腸と大腸がん
大腸は水分吸収と排せつを担う管状の臓器です。大腸の壁は「粘膜」「粘膜下層」「固有筋層」「漿膜[しょうまく]下層」「漿膜」という5つの層で構成されており、大腸がんは大腸の粘膜に発生し、隆起したり、徐々に外側へと広がっていきます。粘膜と粘膜下層にとどまっているものを早期がん、より深いところに浸潤したがんを進行がんといいます。
大腸がんの検査では、まず便の中に血液があるかどうかを調べる便潜血検査が行われ、この検査で出血が確認された場合は内視鏡検査が行われます。大腸の表面を確認するほか、特殊な染色液で染色し拡大して見ることで、表面の模様(ピットパターン)が鮮明に見えるようになり、良性か悪性かや、がんの進行具合がある程度分かるようになってきました。
2.早期の結腸がんの治療
大腸は胃や小腸から続く部位を結腸、肛門に続く15cmほどのまっすぐな部位を直腸といいます。早期がんの治療では病変を切除するのが基本で、結腸がんの治療のポイントは「がんの深さ」です。早期の結腸がんの場合、近年、内視鏡治療をはじめとする選択肢が増え、体に負担の少ない方法や生活の質を落とさない方法が選択できるようになってきています。粘膜にとどまっているがんであれば、がんを取りきることができれば、ほぼ完治します。
内視鏡治療には、隆起したがんにスネアをかけて焼き切るポリペクトミー、平坦な小さながんを隆起させてからスネアをかけて焼き切るEMR(内視鏡的粘膜切除術)、4~5cmほどの大きさの平坦ながんの場合に特殊な電気メスで粘膜下層ごとはぎ取るESD(内視鏡的粘膜下層剥離[はくり]術)などがあります。がんの形状などによっては、腹腔鏡手術や開腹して行う外科的手術が行われます。
3.早期の直腸がんの治療
直腸がんでは、20年ほど前は、早期であってもがんと一緒に肛門を切除し人工肛門にするのが一般的でした。しかし現在では、肛門に近い部位にあるがんでも肛門を温存できるケースが増えてきています。治療法は、がんの深さに加えて、がんの位置がどれくらい肛門から離れているかによって選択します。
がんが肛門から離れている場合には、がんを含む直腸部分を切り取り、結腸と残った部分の直腸をつなぐことで肛門が温存できます。がんが肛門に近い場合でも状況によって2つの肛門括約筋のうち内肛門括約筋だけを切除し、外肛門括約筋を残して肛門を温存する括約筋間直腸切除術が普及しています。ただし、人工肛門のほうが管理しやすいというケースもありますので年齢や体力など総合的に考えて手術方法を決めることが大切です。
http://news.goo.ne.jp/article/kenkotoday/life/kenkotoday-20131111-h-001.html