[ カテゴリー:生活, 食育 ]

ジャガイモは皮付きのまま水からゆでて

ポテトサラダに、イモの煮っころがし、カレーやみそ汁の具、ベークドポテト、ふかしイモ、それにフライドポテト……。1年中食卓にのぼる定番中の定番の食材、ジャガイモ。調理頻度が高いはずなのに、案外、「おいしく食べるための基本的な調理法」を知らない人も多いようで。

――ジャガイモは子供も大人も嫌いな人はいませんね。

先生 ホクホクした食感のジャガイモにはほのかな甘味があります。βアミラーゼというデンプン分解酵素を持っているから糖ができ、ほのかな甘味ができるんです。ジャガイモを加熱すると、この酵素が働きデンプンが分解され糖に変化していきます。ジャガイモを10分間加熱すると、糖はもともと含まれている量の2倍以上に増えるのです。

ホクホク甘いイモに重要な温度帯は、30~50度
――どうやって加熱するのが糖増強のポイントですか?

先生 βアミラーゼは、30~65度で活発に働くため、ジャガイモをこの温度に長い時間保つと糖の量が増えます。

ただし難しいのは、βアミラーゼが活発に働く温度帯の中でも、50~60度付近ではペクチンメチルエステラーゼという別の酵素も働いて、これがせっかくのホクホク甘いジャガイモを硬くしてしまうのです。この温度で長い時間加熱すると、その後にいくら加熱をしてもやわらかくなりません。

――ということは、30~50度で長くゆでると甘くなるということ?

先生 理論的にはそうですが、実際にその状態を保つことは難しいです。温度計でお湯の温度は測れますが、ジャガイモ内部の温度は測れませんし、ジャガイモの中心と外側とでも温度が変わります。

昔から「芋は水からゆでて、葉物(野菜)はお湯でゆでる」と言いますが、それは理にかなっているんですね。水から弱火でゆっくり加熱するとジャガイモにゆっくりと熱が伝わり、βアミラーゼが活発に働いて糖が作られ、なおかつ硬くならない温度帯(30~50度)を通過する時間が長くなるため、その分、糖の量が増します。ただし、皮をむいてゆでるとゆで汁に糖が溶け出し甘味は減ってしまうため、ご注意を。皮付きのままがいいですよ。

――水から弱火ですね。

先生 水からゆでると、ジャガイモの表面温度はゆっくり上がります。中心部分にも表面からの熱がじわじわ伝わるので、表面部分と中心付近の温度差は湯からゆでたときよりも小さくなります。つまり、中心も表面も同じように加熱されていくので、表面が崩れることなく、全体がホクホクとおいしくゆで上がるのです。

――ゆでるときの水の量は?

先生 水は単に熱を伝える媒体として考えればいいのです。ゆでている間にゆで汁から材料が顔を出さない程度の量があればOKです。

――――なぜお湯でゆでるといけないのですか?

先生 湯から皮付きのジャガイモをゆでると、ジャガイモの表面は湯から伝わる熱で急速に加熱されますが、中心部にはそれほど早く熱が伝わりません。だから、湯でゆでるとジャガイモの中心の温度は低いまま。表面部分と中心温度が大きく違うということは、表面部分と中心付近のゆで加減に大きな違いが現れるということです。

加熱によって細胞の中のデンプン粒が水を吸ってどんどん膨らむのですが、そうすると細胞も膨れてパンパンに丸くなり、表面からボロボロはがれ落ちやすくなってしまうのです。やっと中心部に火が通る頃には、ジャガイモの表面部分は細胞がはがれ落ちて組織が乱れた状態になり、ゆで汁の中にジャガイモが溶け出してしまいます。

――とにかくジャガイモは水から、が鉄則なんですね。

先生 必ずしもそうとは限りません。ジャガイモでも、丸ごとではなく、小さい1~2センチ角か、薄く切ったものなら、湯でゆでてもいいです。表面から中心までの距離が短くなり、表面と中心の温度差をそれほど気にする必要がないからです。皮をむいて小さく切ったジャガイモでも水から火にかける人が多いと思いますが、短い時間でゆで上げたいときやジャガイモの形を崩さないようにしたいときには、湯からゆでるとよいでしょう。ただマッシュポテトのように全体の形を均一に崩したければ、小さく切ったジャガイモでも水からゆでるとよいですね。

――最近はスーパーでも全国からいろいろな産地のジャガイモが並ぶことが増えました。食べ比べたら楽しそうです。

先生 名案ですね。子供の食育になります。ジャガイモの甘さを増やすのに気をつけるといいのが、貯蔵法です。実は、5度以下の低温で保存すると、保存直後から糖の量が増えるんです。

――台所の日陰部分に置いていましたが。

先生 野菜室は温度が8~10度。それよりも、3~5度の冷蔵室がいいです。鮮度も長持ちし、甘味も増します。これも酵素の働きによるものです。

http://president.jp/articles/-/10573?page=2

結論:水からじっくり温度を上げると、甘味アップ

ジャガイモを100℃以上で調理すると、アクリルアミドという発がん性物質ができることがわかっている。ゆでる場合は大丈夫だが、焼いたり、揚げたりしたジャガイモは食べ過ぎないように注意したい。

 


先生:佐藤秀美
大手電機メーカーの研究員を経て、お茶の水女子大学大学院で博士号を取得。現在は日本獣医生命科学大学、放送大学で講師として調理科学を教えている。著書に『おいしさをつくる「熱」の科学』などがある。2児の母。

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