近鉄系のホテルや旅館がメニュー表示と異なる食材を提供していた問題で、奈良市の旅館「奈良万葉若草の宿三笠」が、販売していたおせち料理で表示と違う食材を使ったことについて、日本農林規格(JAS)法に違反する疑いがあることが3日、分かった。農林水産省などは近く同法に基づき三笠の関係者から事情を聴く方針。三笠を巡っては、ブラジル産などの鶏肉を「大和肉鶏」などと偽っており、景品表示法違反の疑いも浮上している。
三笠のおせち料理については、三笠を経営する近鉄旅館システムズの北田宣之(のりゆき)社長らが10月31日の記者会見で、今年1月のおせち料理のうち、「からすみ」(ボラなどの卵巣)と「車エビ」の2品が、実際はそれぞれ「タラ・サメの卵」と「ブラックタイガー」を使用していたことを明らかにしていた。価格は2万5000円。自宅へ宅配などする方式で販売した。来年の販売は既に中止を決めている。
JAS法は、主に包装された状態でスーパーの店頭などで小売りされている食材や加工食品が対象。三笠のおせち料理は、これらに該当する可能性がある。レストランのメニューなどはJAS法の対象外で、景品表示法などが適用される。
JAS法の表示基準では、食品を容器や包装に入れて販売する場合、名称や原材料名などを表示するよう義務付けている。基準を守らないケースは、国が指示・命令できると規定。実際の食材と違う表示でも、その程度の差が大きい場合などに行政処分を検討する景品表示法に比べ、JAS法は内容と矛盾したり、誤認させる表示自体を禁止しており、より厳格といえる。農水省は2007年、「牛ミンチ」に豚肉を混ぜていた北海道の食品加工会社を立ち入り検査し、元社長を厳重注意処分にしている。
三笠に納入していた業者によると、タラやサメの卵を使用したからすみ風味の商品は「からせんじゅ」と呼ばれ、からすみの半値程度という。業者は毎日新聞の取材に、「形も色も一緒で『代用からすみ』と呼ばれるが、味は落ちる。取引の詳細は調査しないと分からないが、『からすみを』と三笠に言われれば、きちんとボラの卵を納入していたはずだ」と証言した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131104-00000007-mai-soci