コーヒーを習慣的に飲むことと健康への影響に関する研究成果の発表会(全日本コーヒー協会主催)が6日、東京都内で開かれた。名古屋大大学院の堀尾文彦教授と東京大大学院の高橋祥子さんが、コーヒーが糖尿病の発症を抑える作用を持つことなどについて発表した。【佐藤浩】
堀尾教授は、我が国の糖尿病の9割以上を占める「2型糖尿病」について、コーヒーの発症抑制作用を検証した。2型糖尿病を自然発症するマウスを、ブラックコーヒーを与える群と、水を与える群(対照群)に分け、5週間後の状態を比べたところ、コーヒーを与えた群のマウスの血糖値は、対照群に比べて明確に低い値を示した。
マウスを絶食させて血糖値を下げるインスリンの注射をしたところ、コーヒーを与えた群は血糖値がより低下し、インスリンの効き目が向上していることが分かった。この実験から、コーヒーが、高血糖の発症を抑制する作用を持つ仕組みの一面が明らかになった。
マウスの肝臓の中性脂肪の量も、コーヒーを与えた群が対照群に比べて低く、脂肪肝が改善されていた。コーヒーを摂取すると、肝臓での脂肪酸の合成を低下させ、脂肪肝の形成を抑制することが推測できた。
コーヒーの主要成分のうちカフェインの効果も検討した。カフェイン溶液を与えるマウスの群と、水を与えるマウスの群を比べた結果、カフェイン群の血糖値は、コーヒー群と同様に低かった。
別のタイプのマウスに脂肪の多い食事(高脂肪食)を与えることで2型糖尿病を誘発させる実験もした。
高脂肪食に加え▽水を与える群▽コーヒーを与える群▽カフェインを与える群−−の三つのグループに分け、17週間後に比較したところ、血糖値は三つの群ともほとんど上がらなかったが、血中インスリン濃度をみると、コーヒーを与えた群は水を与えた群の半分程度。カフェインを与えた群も、水を与えた群の3分の1程度となった。
高脂肪食を取るとインスリンの効き目が低下するが、コーヒーやカフェインを摂取すれば改善できることが分かった。
□ □ □
高橋さんは、マウスを使った実験と、培養細胞実験の結果を発表した。
マウスを使った実験では(1)普通食を与える(2)高脂肪食を与える(3)コーヒーを添加した高脂肪食を与える−−の群に分け、9週間後を比較した結果、(3)は(2)と比べ、摂取カロリーに差はなかったが、体重の増加や肝臓の中性脂肪量の蓄積が抑えられていた。さらに肝臓の組織を解析すると、コーヒーを摂取することで、高脂肪食が遺伝子の発現に与える影響を緩和する方向に、遺伝子情報が変わっていることも分かった。
http://mainichi.jp/feature/news/20130923ddm010100024000c.html