企業から学生まで、幅広くコーチングを行う石川尚子氏に、親子での会話の中で、子どもが本当に言いたいことを引き出すコツを教えていただいた。
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子どもたちが発する言葉の背景や意図を聴き取り、受け取ってあげることが、どんなに子どもたちの力づけになるのだろうと思うことがあります。逆に、聴かないまま対応することで、信頼ややる気が失われるとしたら恐ろしいことです。
たとえば、
「ねえ、子どものころ、学校でいじめられたことある?」
とお子さんが聞いてきたら、何と答えますか? 事情を聴き出そうとしますか? または、「あるよ」と言って自分の経験を語って聴かせますか? 「覚えていない」と受け流すでしょうか?
どんな言葉でもかまいませんが、一言返したら、そこでいったん、保護者のほうが「沈黙する」というのはどうでしょうか。
「え? どうして?」「あるよ」などとお子さまに聞いたら、黙って、次の言葉を待ちます。
そうすると、お子さんから次の言葉が出てきやすくなるでしょう。そこで、最初の言葉に隠れていた背景や意図がきっと語られるはずです。お子さんがなぜその質問をしたのか、どんな気持ちで言ってきたのかを聴き出すうえで、「沈黙」は非常に効果的なのです。
実際、この質問を保護者に投げかけた高校3年生Aさんの意図はこうでした。
「わたしは別にいじめられていたわけじゃない。学校で、先生から『いじめはよくないことだけど、最近増えてきている』っていう話を聞いて、昔はどうだったのかなと思っただけ」。
質問を投げかけられた保護者側が「いじめられているの? 大丈夫? お母さんも昔こんなことがあって……だから、まず先生に相談に行こう」といきなり心配するのではなく、「沈黙」を利用して、お子さまの本当に言いたいことをまず聴き取ることが大切です。親子での会話に、意識して取り入れていただきたいと思います。
http://news.goo.ne.jp/article/benesse/life/benesse-10054.html