将来は医学部に行かせたいけれど、でもまだ小学生だから……。
いえいえ、準備に早すぎるということはありません。今のうちにやるべきことがあるのです。
医学部受験指導の“神様”による特別レクチャー。「読解力」について解説します。
■卒業までに新聞の社説を読めるようになろう
計算力と並んで重要なのが読解力です。医学部志望なのに読解力が大事というのは意外に思われるかもしれません。しかし今の子供を取り巻く環境は、親の時代とは様変わりし、文章に触れる機会が格段に少なくなっています。
そのため子供たちの読解力の低下は著しく、結果として物理や数学の文章題を読みこなせなかったり、解答の解説文が理解できずに正解への過程がわからなかったりする事態がたびたび起こっています。
語学のみならず、すべての学問は読解力があるからこそ伸びていくものなのです。
実際に、ある小学校で調査を行ってみたところ、読解力と各教科の成績はきれいに正比例していたそうです。「読解力はないが算数はできる」などという子はいないのですね。
もっとも、大事だからといって、読解力とされる能力をまんべんなく鍛えろというのではありません。
医学部を志望する子の場合は、理数系科目の理解に必要な「論理的読解力」にたけていることが大事ですから、物語や詩の理解を問う「心情読解」は後回しで構わないでしょう。
さてその論理的読解力ですが、論説文、つまり初めに問題提起や現状説明がなされ、論理展開を経て結論へと導かれる構成の文章を、繰り返し読むことで訓練できます。
小学校の高学年であれば新聞、とくに社説がよい題材になります。
一般紙が難しければ、小学生新聞でかまいません。6年生の終わりまでに社説程度の長さ、つまり1400字前後の論説文を読んで内容をきちんと理解し、論理展開の因果関係を把握しながら要約できるようになるのを目標にしましょう。
また読書が好きな子なら、新書やブルーバックスのような科学読み物もおすすめです。最近では新書にも平易な文章で書かれたものが増えており、小学生でも理解しやすくなっています。
新聞や新書類がまだまだ難しい小学校低学年の子であれば、書き言葉に慣れることから始めるとよいでしょう。物語、図鑑、歴史漫画など、ジャンルは何でもいいので、まずは文字に触れる機会を増やすことが大事と考えてください。
一般に小学校の国語教育は物語の解釈や心情読解が中心で、医学部受験に必要な論理読解にはさほどウエートが置かれていません。したがって医学部を目指すなら、たとえ国語の成績が良かったとしても、あとで家庭でフォローする必要があると私は考えています。
例えば、子供が本を手に取りやすい環境が家庭の中にある、あるいは新聞の社説や記事を子供が読んでいたら「内容を要約してごらん」と親が促してみる。そして要約した内容が、文章のエッセンスをきちんとつかんでいるか確認する。
そんなふうに親が手伝って文章理解のきっかけをつくってやることが、子供の読解力を伸ばすのです。
次回(10月21日更新予定)は「表現力」について解説します。
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和田秀樹
精神科医。東京大学医学部卒業。診療を続ける一方、著書『受験は要領』がベストセラーとなって以来、受験指導の権威としても知られる“受験の神様”。
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(石田純子=構成 教える人:和田秀樹)
http://news.goo.ne.jp/article/president/life/education/president_10906.html