毎日新聞は、インターネット検索大手のヤフーが保有する地震防災に関連した検索数のビッグデータを使って、ネット利用者の防災への関心の推移を分析した。2011年の東日本大震災で高まった関心が続いているが、別の調査による対策実施率を突き合わせると、関心の高まりが実際の対策に結びついていない例もある。地震防災に関する有効な情報伝達を考える上で、ビッグデータの活用が期待される。
【ビッグデータってなに?】統計学は最強セクシー 宝の山、ビッグデータを掘削 人材育成急務
田中幹人(みきひと)・早稲田大准教授らの協力を得て16のキーワードを選定。これらが08年9月1日~今年9月1日の5年間に「ヤフージャパン」で検索された1日当たりの件数の推移をみた。
その結果、東京大総合防災情報研究センター長の田中淳(あつし)教授は、16語のうち「非常食」「地震保険」「耐震補強」に着目する。震災を契機に検索が一気に増え、その後も関心は高い水準にあり、1日当たりの平均検索数は、震災前の1.3~3.1倍に増えていた。
一方、東大が09年から毎年12月に全国2000人以上を対象に続けるアンケート調査では、関心の高まりを背景に水・食料の備蓄率は10年から2年連続で上昇。地震保険の世帯加入率も10年度末の23.7%から12年度末は27.1%にアップ(損害保険料率算出機構調べ)した。だが、耐震化率については東大の調査で変化が見られない。
田中淳教授は「『耐震補強』への関心の高まりが行動につながっていないのは、信頼できる業者など十分な情報が得られていないためではないか。比較的安価な『非常食』では、検索の推移と実施率が比例しており、情報と費用が行動を左右する大きな要因だと示唆している」と分析する。「ビッグデータという新たな『武器』と既存の調査などを相互補完させれば、防災行動に効率よく結び付く情報発信の手法のヒントにつながる」と指摘する。
インターネットの普及やコンピューターの情報処理能力の向上に伴って生まれる大量で多様なデータは、ビッグデータと呼ばれる。市場調査や渋滞予測など多方面で活用され始めている。【渡辺諒、八田浩輔】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131019-00000013-mai-sctch
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