体操や口腔(こうくう)ケアなどの講座を通して高齢者の健康維持を図る広島県福山市の「介護予防事業」がお年寄りに人気だ。2012年5月にスタートした「一次予防事業」の昨年度利用者は延べ約8500人。
今年度も4~6月に125回の講座を開き約1800人が受講した。介護施設に頼らない元気なお年寄りを増やすのが狙いで、市高齢者支援課は「今後も内容を充実させて利用者を増やしたい」としている。
同市瀬戸町の「瀬戸ふれあいプラザ」で、10日に開かれたヨガ講座。インストラクターの佐古智恵子さん(41)が「目を閉じて体の力を抜いて」と1人1人の体の動きを確認する。
参加したお年寄り10人は横になり、膝を手で抱えたり、首を左右に振ったりして体をほぐした。主婦の宮沢智恵子さん(71)は「講座のおかげで体がいきいきする。気持ちにも張りができる」と笑顔で話す。
講座は、体操やストレッチを通して体力維持を図る「運動系」、介護のこつや心構えを学ぶ「介護教室」、「お口の健康教室」など様々なコースを用意。65歳以上の市民は誰でも無料で利用できる。12年度は54会場で685回開催され、8584人が参加した。
お年寄りの健康状態をチェック票で把握し、対象者を絞って行う二次予防事業「いきいき介護予防教室」は11年度に始まった。
まず、市が65歳以上の全市民にチェック票を郵送。「15分以上続けて歩いているか」「毎日の生活に充実感はあるか」など25項目に回答し、該当する項目が一定数以上ある場合、「いきいきシニア」に認定され、「膝・腰痛対策」などの講座を受講できる仕組みだ。
チェック票は3年間かけて全員に送付。12年度は4万1614人に送付し、5890人が認定され、1202人が講座に参加した。
市が高齢者の自立を促す講座を充実させるのは、要介護者の受け皿となる入所施設が慢性的に不足していることが背景にある。
市によると、在宅で介護保険サービスを受けている要介護認定3以上の施設申込者は、08年度の385人から、昨年4月現在で544人と増加する傾向にある。市は14年度までの3年間で、地域密着型特別養護老人ホームなどの定員を448人増やす計画を進める最中だ。
市介護保険課の住元利博課長は「まず、家で過ごしたいお年寄りの願いをかなえる事業を充実させたうえで、施設が必要な人に整備も進めていきたい」と話す。(大森篤志)
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