[ カテゴリー:医療, 社会 ]

薬の「費用対効果」とは?

薬効に見合う価格か検討

中央社会保険医療協議会(厚生労働相の諮問機関、中医協)が、薬の価格(薬価)について、その「費用対効果」も考慮して設定するかどうか、議論を進めています。

今月上旬に中間の論点整理案をまとめ、来年度の診療報酬改定から試験的に導入できるか検討しています。

――薬の費用対効果とは何ですか。

「薬には、生存期間を延ばしたり症状を和らげたりする効果を期待できますが、副作用で患者を苦しめる場合もあります。こうした点を踏まえ、薬価について、その効果にふさわしい価格が設定されているかを見極めよう、という考え方です」

――なぜ今、議論しているのですか。

「新型抗がん剤の登場など医療技術の革新や高齢化が進み、医療費は毎年増えています。一方で財源は限られており、このままでは公的医療保険制度を維持するのが難しいという危機感が背景にあります。そのため、効率的な医療費の使い方を考える必要に迫られています」

「例えば、ある抗がん剤を使う場合、費用は1000万円近くかかるものの、既存薬と比べた延命効果は1か月半程度にとどまる、と試算されています。高血圧の治療薬を服用する人は800万人いるとされていますが、例えば1日100円分かかる薬を全員が飲むとすると、年間費用は3000億円に達します」

――費用対効果はどう調べるのでしょうか。

「それぞれの薬で、延命や症状緩和の効果を得るのにかかる費用を計算します。効果には、服用した際の生存期間と生活の質を組み合わせて算出する指標『QALY(クオリー)』が、スウェーデンや英国など諸外国で広く使われています」

「費用は薬剤費や検査費などの医療費を積算します。新薬では既存薬に比べ、1クオリーあたり、どの程度費用が増えるかを分析します」

「論点整理案では、対象に手術なども含めましたが、患者の少ない病気の治療は外しました。効果の指標にはクオリーと合わせ、生存期間や治癒率も挙げました。費用面では、仕事ができない経済的な損失や介護費も加えられるよう、方向性が示されました」

――計算の結果をどのように活用するのですか。

「効果に対して薬の費用があまりに高いとみなされれば、スウェーデンのように公的医療の給付対象から外したり、オーストラリアのように給付額を下げたりします。英国では、既存薬と比べて新薬にかかる費用の上昇が、1クオリーあたり2万~3万ポンド(310万~480万円)以下ならば、公的医療から給付する、という目安が国立医療技術評価機構(NICE)から示されています」

「今後、費用対効果の手法について、日本の公的医療保険制度に適した導入方法が議論される見通しですが、論点整理案では、保険適用から外したり、薬価を上げ下げしたりするのに使う案が示されました」

「ただ、計算結果を機械的に保険給付の方針に反映させるわけではありません。終末期の患者向けの薬は効果が高いとみなすなど社会的影響も考慮し評価したうえで、公的医療保険で賄うかを決定する方向です」

――導入に関し、注意点はありますか。

「英国では、一部の抗がん剤を公的医療の給付対象から外したところ、治療を受けられない患者の不満が高まる事態が起きました。薬価が下げられれば、原価割れを避けるため、製薬企業による販売控えも想定されます。患者に必要な薬が届かない事態が起きないよう、制度作りには十分な配慮が必要です」

「また、英国では高血圧薬の処方に費用対効果の観点を加味し、同じ効果なら安価な薬を薦めたりする指針を国と学会が策定しています。日本でも処方に費用対効果の観点を取り入れてもいいでしょう」(米山粛彦)

http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=85038

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