「食中毒」というと夏場に多いイメージがありますよね? しかし、ここ数年の厚生労働省の「月別食中毒発生状況」をみると、9~10月の食中毒発生件数が目立っているようです。
例えば、2010年にもっとも食中毒の発生件数が多かった月は、10月の163件。2011年は9月の139件。2012年はなんと真冬の12月が1番多く、10月が2番目に多い112件となっています。どうして秋口を過ぎてからの発生件数が、年間を通した上位になるのでしょうか。国立感染症研究所細菌第一部長の大西真先生に伺いました。
「秋以降に増えるというよりも『夏に食中毒が多い』という傾向が近年崩れてきていることが理由に挙げられます。もともと夏は細菌性の食中毒が起こりやすいのですが、主な原因菌のひとつだった『腸炎ビブリオ』や『サルモネラ属菌』による食中毒の発生件数が、以前に比べて減ってきているのです」(大西先生)
厚生労働省の統計資料によると、腸炎ビブリオによる食中毒の発生件数は、1998年の年間839件を最後のピークに年々激減しており、昨年は9件のみ。サルモネラ属菌も1999年の825件をピークに、昨年は40件まで減っています。
この背景について大西先生は「食品管理が徹底されてきたことが大きな要因」といいます。
「腸炎ビブリオは海水中に生息している菌で、この菌に汚染した魚介類を生食することが食中毒の原因となります。しかし、魚介類の洗浄方法や流通時の温度管理などがしっかり管理されるようになったため、発生件数が減ったと考えられています」(同)
秋のシーズンに食中毒の発生が目立つ原因はほかにもあるようです。
「一概にいうことは難しいのですが、季節的にキノコなどの『自然毒』による食中毒が増えることがひとつ。そして、行楽シーズンということもあり、バーベキューなど衛生管理が不十分な野外での食事が増えることや、冬に細菌性のものにとってかわり増加するウイルス性の食中毒と時期的に重なることも原因として考えられます」(同)
野外での食事がきっかけで起こりやすいのが、調理不十分な肉などを感染源とする「カンピロバクター」や「腸管出血性大腸菌」による食中毒。厚生労働省と国立感染症研究所が発表したIDWR「腸管出血性大腸菌感染症の年別・週別発生状況」によると、2012年の腸管出血性大腸炎による食中毒の報告数は、8月をピークに10月まで続いていることがわかります。
食中毒を防ぐためには、菌を付けない、増やさない、やっつけることがとても重要で、手洗いをはじめ、生肉の調理方法など基本的なことを注意していれば、リスクを減らせると大西先生はいいます。暑さのピークが過ぎたからといって、油断しないことが何よりも大切なんですね。
(成田敏史/verb)
(R25編集部)
http://news.goo.ne.jp/article/r25/life/r25-20130919-00032217.html