2013年度の世界幸福度レポート(World Happiness Report)が、コロンビア大学地球研究所から発表された。これによると、世界で最も幸福度の高い国はデンマークで、続く2~5位は順にノルウェー、スイス、オランダ、スウェーデンとなっている。
国連の「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」の支援を受けて行われたこの調査は、2010年から2012年にかけて実施され、世界156カ国に住む人々の幸福度を国別のランキングにまとめたものだ。評価基準としては、富裕度、健康度、人生の選択における自由度、困ったときに頼れる人の有無、汚職に関するクリーン度や同じ国に住む人々の寛大さなどの要素が考慮されている。
この総合ランキングで、アメリカは17位と、メキシコ(16位)のすぐ下に位置している。その他の国々では、イギリスが22位、ロシアが68位に入ったほか、中国はかなり低位の93位、イラクは105位にランキングされている。内戦状態にあるシリアが148位にあるのは意外ではないが、西アフリカ地域にはこのシリアをも下回る国が存在し、ベナンが155位、そして最下位の156位となったのは隣国のトーゴだった。
アジアで一番ランキングが高いのはアラブ首長国連邦の14位。ほかにはシンガポールが30位、タイが36位、日本が43位などとなっている。
今回のレポートでは、地球上で最も幸福度の高い国々について、いくつかの共通点を指摘している。この記事では5つのポイントを紹介する。
【 1 】豊かな国は幸福度も(おおむね)高い。
これは分かりきった話と言えるだろう。お金で幸福は買えないかもしれないが、あるに越したことはない。そのことは、世界で最も幸福度の高い国々のリストを一目見るだけでも明らかで、上位の国々は生活費が高い場所ばかりだ。
これらの国々はいずれも税金が高く、社会福祉政策に多額の支出を行い、医療体制が充実している。また、戦争の当事国ではなく、マラリアも流行していない。加えて、汚職も極めてまれな国々だ。
【 2 】豊かな国には問題も多い。
とはいえ、豊かであること自体も、ストレスや問題の要因になると、コロンビア大学地球研究所の所長で、今回のレポートの共著者であるジェフリー・サックス(Jeffrey Sachs)氏は指摘する。
サックス氏は、全世界で年間約5000億ドルの市場規模を持つ広告業界が、「人間が持つ心理的な弱点や無意識の渇望を食い物にし」、そのために豊かな国に住む人々の幸福度は下がっていると警告する。
基本的には幸せなはずの西側の先進国で幸福度が下がっている理由としては、このような豊かさにまつわるストレスや、欲望がかなえられないことへの失望があるとも考えられる。一方で、発展途上の地域、特にラテンアメリカやサハラ以南のアフリカの国々では幸福度が向上していると、サックス氏は述べている。総合的な幸福度が前回との比較で最も上昇した上位2カ国(61位のアンゴラと103位のジンバブエ)はアフリカの国々だった。
【 3 】ヨーロッパの貧困国は幸福度が特に低い。
ブルガリアは欧州連合(EU)加盟国ではあるが、その中でも他国を大きく引き離して最も貧しい国であり、慢性的な汚職体質に悩まされている。
今回の調査によると、ブルガリアは幸福度が特に低く、全世界での順位は144位と、アフガニスタン(143位)、イエメン(142位)、イラク(105位)といった国々を下回っている。この10年で平均1200%近くという極度のインフレを経験したジンバブエでさえ103位にランキングされており、ブルガリアよりも国民の幸福度は高い。
【 4 】気候の良さは幸福につながらない。
日常生活における幸福度を考える際には、気候の良さはプラス要因にはならないようだ。
10位のオーストラリアを除くと、幸福度ランキングでトップ10入りを果たした国々は、いずれも長く厳しい冬を堪え忍んでいるところばかりだ。オーストラリアのすぐ上の9位にランクインしたアイスランドでは、冬季にはまったく太陽を見ることができない。対照的に、幸福度の高い北欧の人々が新婚旅行や休暇で好んで訪れる観光地のモーリシャスは67位、陽光降り注ぐカリブ海の国、ジャマイカは75位にランキングされている。
【 5 】幸福度の高い国には、自転車先進国が多い。
デンマーク(幸福度1位)とオランダ(同4位)は、世界でも有数の自転車先進国として知られている。また、幸福度で上位に入っているその他の国々も、自転車に優しいことで有名だ。確かに、経済大国に登りつめた中国や、発展途上地域のほとんどでも自転車が主要な交通手段として使われているが、これらの国に住む人々は好きこのんで自転車に乗っているわけではない。
2010年には、中国でテレビのクイズ番組に出演した20歳の女性が、「自転車に乗って笑っているよりも、BMWに乗って泣いている方がいい」と発言したが、中国ではこのような考え方をするのはこの女性だけではない。
Roff Smith for National Geographic News
http://news.goo.ne.jp/article/nationalgeographic/world/20130910001-ng.html