記憶力や判断力が低下する認知症のお年寄りが増えていると聞きますが、実態はどうですか?
全国の認知症高齢者は、厚生労働省の研究班が今春まとめた調査結果では、2012年度で462万人と推計された。65歳以上の高齢者約3079万人の15%にあたる。
年代別で見ると、65~69歳では2・9%だが、85歳以上では4割を超える。有病率は、加齢とともに上昇し、男性より女性の方が高くなる。
認知症とは、病気などが原因で脳の細胞が死んだり働きが悪くなったりして、記憶や注意力、判断力といった認知機能が低下し、生活に支障が出ている状態をいう。
原因となる病気は、70種類程度あるとみられているが、調査結果によると、記憶障害が主体となるアルツハイマー型の認知症が全体の67・6%を占め、最も多かった。次いで、脳梗塞などが原因となる脳血管性が19・5%、幻視などを伴うレビー小体型が4・3%などと続いた。
同省は昨年、介護保険の利用データを基に、介護サービスを受けている認知症高齢者を約305万人と推計した。研究班との差となる157万人は、介護サービスを利用していない軽度者とみられている。ただ、症状はほぼ確実に進行するため、数年後には介護が必要になることが多い。
また、研究班は、認知症を発症する前段階とみられる軽度認知障害(MCI)の高齢者も約400万人いると初めて示した。軽度認知障害は、本人や家族から記憶力低下などの訴えがあるが、日常生活に支障はない状態で、将来、認知症を発症する可能性のある「予備軍」と言える。
一方、軽度認知障害と診断された人の約4割は、数年後に正常な認知機能に回復したという国際的な研究報告もあり、どんな支援を行えば回復できるかが明らかになれば、予防や発症を遅らせることにつながると注目されている。
現在64~66歳の団塊世代がさらに高齢になり、認知症の人が急速に増えると見込まれることから、同省は、安心して在宅で暮らせるための新たな支援にも取り組んでいる。
同時に、軽度者や軽度認知障害の人も多いことから、生きがいを持って暮らせるように社会参加できる場づくりや、認知症の進行や発症を遅らせるための研究の推進も急がれる。(本田麻由美)
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