「人を操って自分の望みどおりのことをさせるワザ」は、一般的には悪いものとされています。けれども、きちんとした目的がある場合には、このワザの利用が正当化される場合もあります。相手にもっと健康的な生活を送ってもらおうとしたり、自分と一緒に楽しい時間を過ごしてもらおうとしたりするケースなどが、それにあたるでしょう。
ここでは、ほかに打つ手がなくなり、ちょっとした「操作」に頼らなければならなくなった時に役立つトリックをいくつか紹介しましょう。これらを使えば、自分の倫理観に背くことなく、相手に望みどおりの行動をとらせることができるはずです。
誰かに操られるのを喜ぶ人はいません。ですから、これから紹介するトリックを、悪意のある目的で使ってはいけません。あなたが誰を操ろうとしているにせよ、これから話す内容のほとんどは、相手をもっと幸せに、そしてもっと楽しくさせるためのものです。つまり、単に自分の望む行動をとらせるのではなく、操られる側にとっても有意義な経験を生み出すことが目的です。
ここでは、「ある活動に友人などを引き込んで楽しい時間を過ごす」というシナリオを例にとって、説明していきたいと思います。これは説明をシンプルにするためであり、ここで紹介するトリックは別の状況でも使えます。それでは、2つのステップを見ていきましょう。
ステップ1:一緒に来てもらうよう、友人に頼む
何かを一緒に楽しめる相手がいるのは良いことです。ただ、あなたの趣味が前衛彫刻のようなもので、その楽しさを友人に説明するのが難しい場合は問題です。
けれども、幸いにも人は状況によって考え方を変えるものです。たとえば、去年の春までは大嫌いだったお祭りのはずなのに、気がつけば5回目の出場を果たし、1等賞を狙っている…なんてこともあるでしょう。
それはさておき、私たちが何かを好きになるかどうかには、たいてい状況が大きく影響しています。つまり、友人を自分の趣味に引き込みたい場合には、良い条件を揃えることで、一緒に楽しんでもらえる可能性を高くできるのです。
そこでまず必要となるのは、「友人に一緒に来てもらうこと」です。ただし、お誘いをかける際に、友人をその気にさせようとさまざまな説得を試みるのはやめましょう。この方法だと、説得された人は、つい反論を考えてしまいます。代わりに、「私のために一緒に来て」とお願いしてみましょう。
人間には、誰かのためにちょっとしたことをしてあげると、その人を好きになってしまうという傾向があります。一般に考えられているように、「その人のことが好きだから何かをしてあげる」というだけではないのです。その一例として、デビッド・マクラニー氏のブログ「You Are Not So Smart」では、ベンジャミン・フランクリンのエピソードが紹介されています。
フランクリンは、敵を味方に変えようとしていましたが、だからといって「相手に対して、卑屈なかたちで敬意を払う」ような真似はしたくありませんでした。書籍の収集家で、図書館の創設者としても知られていたフランクリンは、「本の目利き」として有名でした。そこで、この評判を生かして敵に手紙を送り、彼の蔵書から「とても希少で興味深い本」を貸してもらえないかと頼んだのです。敵は気を良くして、すぐに本を送ってきました。そして1週間後、フランクリンは感謝の手紙を添えて本を返却します。これでミッション完了というわけです。
こうした効果が起きるのは、私たちの脳に原因があります。私たちはたいてい、「誰かのために何かをするのは、その人のことを好きだからだ」と考えます。でも私たちの脳には、それとは逆方向の解釈をする傾向があります。つまり、「誰かのために何かをしたから、その人のことを好きになってしまう」というわけです。
友人になんらかの行動をとらせたいのなら、無理やり引っぱり込もうとするよりも、その行為を一種の「親切」だと思わせるほうが良いのです。相手はあなたのことを好きになってくれるでしょう。
ステップ2:友人を楽しませる
どうすれば友人に楽しんでもらうことができるのでしょうか? 絶対に確実な方法はありませんが、可能性を高くすることはできます。その方法を、いくつか紹介しましょう。
一緒に試練に立ち向かう
友人を引き込もうとしている活動に、何かちょっとした試練があると良いでしょう。困難にぶつかった時に一緒に立ち向かえば、その経験が絆を強めてくれます。たとえ活動そのものを楽しめなくても、「あなたとの仲が深まった」という理由で、あとで振り返った時に良い印象を持ってくれるはずです。
なじみのある心地良い環境を選ぶ
なじみのあるものや、好きなタイプの人に囲まれた環境を用意しましょう。私たちは、「自分は新しい可能性に対してオープンな態度をとっている」、「他者との違いを尊重している」と考えたがる傾向がありますが、実際にはそうではありません。誰かに何か新しいものを好きになってもらいたい場合は、できる限りの方法で、心地良さを感じてもらえるように努めると良いでしょう。
友人の気分を盛り上げる
あらかじめ友人の気分を盛り上げておきましょう。これは、特に相手が、仲良くなるまでに時間のかかった「気難しくてネガティブなタイプ」だったりすると、難しいタスクのように聞こえるかもしれません。でも、思っているほど難しくはないのです。
脳のハッキングに関する米Lifehackerの記事でも触れているように、いくつかのシンプルな方法を使えば、ある状況下で適切な態度をとることができるよう、脳を鍛えることができます。たとえば、「ポジティブな言葉を何度も声に出す」というのもそうした方法の1つです。ただ、ほかの人と一緒にいる時に実践するのは、少しきまりが悪いものです。
そこで、あなたの熱意によって、相手の気分を高めるようにしてみましょう。最良の選択肢の1つは、「相手を笑わせること」ですが、あなたが生まれつきのひょうきん者ではなく、話で人を笑わせるのが苦手であれば、頻繁に笑顔を見せるだけでも効果があります。
次に誰かの笑顔を目にしたら、ちょっと意識してみてください。きっとあなたも笑顔を返しているはずです。幸せな表情は無意識に出ることが多いため、つられずにいるのは難しいのです。笑顔やユーモアのようなちょっとしたことでも、とても大きな違いを生みます。それが実際の活動とはまったく関係がなくても、その効果に変わりはありません。
友人の能力をほめたたえる
最後にもうひとつ。「ほめ言葉」を忘れてはいけません。何かをしたり、作ったりする必要のある活動の場合は、終わった時に、その成果をほめるようにしましょう。人間には、自分の能力が評価されるかたちで努力が報われると、そうでない場合よりも、その行為を好きになるという傾向があります。まったくのウソを言う必要はありません。「わあ、思っていたよりもずっと覚えが早いね」程度のほめ言葉でも、その活動に対して相手が抱く印象は大きく変わるはずです。
Adam Dachis(原文/訳:梅田智世/ガリレオ)
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