テレビで字幕付きのコマーシャル(CM)が相次いで流され始めた。聴覚に障害のある人や高齢者らから歓迎されている。
食卓に向かい合うシニア世代の夫婦。夫が作った料理を笑顔でほめる妻の下に〈パパありがとう。おいしそうやんかぁ〉と字幕が表示される。〈あの~40何年間支えてもらってというか〉と妻に感謝する夫。2人の会話の後、炊飯器やオーブンレンジが映し出される……。パナソニックの調理家電の字幕付きCMだ。毎週土曜朝のトーク番組「サワコの朝」(TBS系)で、8月下旬から放送されている。
花王は、毎週金曜夜のトーク番組「A―Studio」(TBS系)など計3番組の中で流すCMはすべて字幕入りにしている。同社は2011年から約270種類の字幕入りCMを放送している。同社ホームページでも見ることができる。
このほか、ライオンは今年4月から平日午後の番組で洗剤などのCMを字幕付きで流している。キヤノンは7月から、日曜の番組でカメラのCMを放送中。
字幕は、耳の不自由な人にも映像の内容を理解してもらうため。地デジテレビは一部機種をのぞき、リモコンの「字幕」ボタンを押すと、字幕が画面の下に表示される。
ニュースやドラマでは「字幕付き」番組が増えている。新聞のテレビ番組欄などで(字)と表示されているのが「字幕付き」だ。総務省の調べ(2011年度)では、NHK総合は総放送時間の61%が字幕放送。在京民放キー局は46%という。
一方、CMでは普及が遅れている。字幕がCM出演者や商品名を隠してしまうおそれがあるほか、字幕が出るタイミングが遅れると次のCMの映像に重なる心配があるなど、技術的な課題が少なくないからだという。現在、字幕入りCMが流れるのは「1社提供」番組内など限定的だ。
第一生命経済研究所上席主任研究員の水野映子さんは、「商品に関する情報も大切。高齢化が急速に進む時代、字幕がますます大切になってくる。ただ、リモコンで字幕が表示できることを知らない人がまだ多い。もっとPRしていく必要性があるのでは」と指摘している。
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