EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などのすぐれた脂肪酸を多く含む魚は、子供たちにもっと食べさせたい食材の一つ。ただ、「うちの子は魚が苦手」と思っている保護者も少なくない。最初は嫌いな味でも、味の記憶に楽しい思い出がつながると、次第にその味が好きになってくるという。子供たちの「魚離れ」を食い止めるためにも楽しい魚料理の体験をたくさんさせよう。(平沢裕子)
◆味の記憶
夏休み真っただ中の8月中旬、東京都港区のABCクッキングスタジオで、料理ブロガーとその小学生の子供を対象にノルウェー産の塩サバを使った料理教室が開かれた。慣れない手つきで野菜や塩サバを包丁で切ったりマフィンにマーガリンを塗ったりする子供たち。出来上がった塩サバサンドにかぶりつき、「おいしい」と笑顔を見せた。
「楽しみながら料理をすることは、味の記憶に楽しい思い出をつなげることになる。魚が嫌いな子供も、魚料理作りや釣りなどの楽しい体験を重ねることで魚が好きになっていく」。こう話すのは、子供の食育に詳しい名古屋短期大の小川雄二教授だ。
人によって食べ物に「好き嫌い」があるのは、味の評価の基準が人によって異なるためだ。
人間が感じることのできる基本的な味は、甘味▽うま味▽塩味▽苦味▽酸味-の5種類で、これらを「五原味」と呼ぶ。このうち、甘味・うま味・塩味の3種類は、生きるために必要な糖質(エネルギー)やタンパク質、ミネラルの存在を示すもので、本能的に好む味。五原味ではないが、「油(脂)の味」も本能的に好む味の一つだ。
一方、苦味は毒物、酸味は腐敗の存在を示すため、本能的に好まない味。辛味や渋味、えぐ味といった味も本能的には好まない味といえる。ただ、味覚経験を積むことで、適度な苦味や酸味は受け入れることができるようになる。子供のときには「苦くてまずい」と思ったビールを、大人になって「おいしい」と思うようになるのは、味覚経験のたまものともいえる。
◆おいしい顔
好きな食べ物を増やすには、家族や友達とバーベキューをしたり鍋を囲んだりするなど食事の雰囲気を楽しいものにする。大人がおいしそうに食べるのも効果がある。また、「おいしそうだね」と声を掛けるだけで、子供はその食べ物をおいしく感じるようになるという。
子供自身が「食のプロセスに関わること」も大切だ。野菜の栽培や収穫体験、スーパーで一緒に食材を選ぶ、料理の手伝いなどを経験させることによって食べ物のプラス情報が脳と結びつけば、嫌いだった食べ物もいつの間にか好きな食べ物に変わっていくという。
小川教授は「人間は子供時代に好きになった食べ物の組み合わせで生涯の食習慣をつくっていく。大人になったときにいろいろな料理をおいしく味わうためにも、子供たちに楽しい味の体験をたくさんさせてほしい」と話している。
■塩サバサンド
料理教室で親子が作った「塩サバサンド」は、料理研究家の浜田陽子さんが考案した。子供でも簡単に作れるので、親子で挑戦してみよう。
【作り方(1個分)】
(1)塩サバ(フィレ1/4枚)は骨の部分を切り落とし、食べやすい厚さにそぎ切りする。
(2)フライパンにサラダ油少々を熱し、(1)を中火で両面焼く。
(3)マヨネーズ大さじ1/2とケチャップ小さじ1/2を混ぜ合わせる。
(4)パプリカ(黄、1/4個)とキュウリ(1/4本)は薄切り、プチトマト(1個)は横半分か1/3に切る。
(5)マフィン(1枚)は横半分に切り、1枚の断面に(3)を塗り、(2)(4)をおく。
(6)残り1枚のマフィンの断面にマーガリン適量を塗り、(5)にかぶせて挟む。
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/life/snk20130829514.html