原発事故の際、周辺地域の住民に安定ヨウ素剤を服用させるとの国の方針を受け、配布の実務を担う自治体が困惑している。ヨウ素剤は医薬品のため、配る際には原則、医師による個別の説明や副作用が出やすい体質かどうかの確認などが欠かせないが、医師や説明会場の確保、事故時の配布方法など課題が山積しているからだ。
原子力規制委員会・規制庁が先月、公表した方針は、自治体は安定ヨウ素剤を原発から約5キロ圏のほぼ全住民に事前配布し、約5~30キロ圏では原則として事故時に配るとした。3~12歳は丸剤1錠、13歳以上は2錠と年齢によって量を分けたほか、3歳未満については薬剤師が調製する薬液の服用を求め、事前配布の対象外とした。
東京電力柏崎刈羽原発の地元、新潟県柏崎市では、約5キロ圏に7地区約1万7000人が住むが、各地区とも住民全員を対象に説明できる会場がない。市の防災担当者は「説明役の医師の確保も難しい」と悩む。さらに、同市の5~30キロ圏の人口は7万4000人。屋内退避時に取りに来てもらうことは現実的ではなく、対応を模索している。同県刈羽村は「仕事などで村外から来ている人にどう配るかも課題だ」と指摘する。
北海道電力泊原発の地元、泊村も「事情は同じ」と訴える。村に薬局はなく、3歳未満への配布に必要な薬剤師の確保が新たな問題として浮上した。四国電力伊方原発の地元、愛媛県伊方町は「説明会を開催しても来ない人には個別の手渡しが必要。必要な薬が年齢で変わるため更新も課題だ」と話す。【高木昭午】
◇安定ヨウ素剤
放射性でないヨウ素を薬にしたもの。通常は甲状腺の病気の治療などに使う。原発事故などで、放射性ヨウ素を体に取り込む24時間前~直前にこの薬を飲むと、甲状腺の被ばくを10%以下に、取り込み後8時間以内に飲むと同60%以下にできるとされる。福島第1原発事故では国や福島県の服用指示が遅れた。
毎日新聞
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/medical/20130817k0000m040099000c.html