大勢の人前でのスピーチを数日後に控えたある日。私は胃のあたりに違和感を感じ、何も食べられなくなってしまいました。
こんなストレスには耐えられないと、スピーチをキャンセルしようと何度思ったことか。それでも何とかステージに上った私。手からは汗がにじみ出ます。逃げ出したい衝動。でも、やらなきゃ。
そうして話し始めたところ、すっと気持ちが軽くなりました。そしてすべてを終えたときには、むしろウキウキな気持ちになっていたのです。
私はこれまでに、同じようなことを何百回も経験してきました。名だたる大企業相手に登板を命じられたり、1日に複数の記者会見をこなしたり、テレビに生出演したりしました。そして今のところ、それらの(ほぼ)すべてについて満足していて、同時に自分が日々進歩していることも感じられています。
ステージ上で走り回るよりも、家にこもって本を読んでいる方が好きだった私が、人前で緊張することなくプレゼンできるようになるまでには長い時間がかかりました。そんな経験から得られた人前で話すときに使える6つのアイデアを紹介します。
1.人生から目を背けるのも真正面からぶつかるのも、すべては自分次第
人生で成功を収めたいのなら、人前で話すことは避けて通れません。それも1度きりではなく、話す機会は何度でも訪れるでしょう。
あるイベントでの失敗についていくら言い訳をしたところで、次のプレゼンで何が起こるかはわかりません。正しい努力を続けていれば、機会は次々にやってくるはず。あなたなら、そんな人生から目を背けますか?
自ら逃げていくことのない何かに直面し、それを必死で避けようとするのも、受け入れて正面から向き合うのも、あなた次第なのです。時間がたつほどプレッシャーは高まるので、始めるのは早いに越したことはありません。
2.セリフは用意するが、書き出さない
私たちが人前で話すのを怖いと感じるのは、ステージ上で頭が真っ白になって、言うことを忘れてしまうのを恐れているからです。
これを何とかするために、多くの人がセリフを書きます。でも、書き出したセリフをただ丸暗記して話すのはおすすめしません。なぜならCDをラジカセに入れて再生するのと何ら変わりないから。これでは堅苦しくて活気のないスピーチになってしまのは間違いありません。
私がおすすめする方法は、PowerPointのスライド1枚につき、1行から2行程度のメモを書くこと。それだけで、私はすぐに発表練習に入ります。
これにより一字一句読み上げるよりも、思いついたことを言葉にすることができます。この時点ではまだ言いたいことも固まっていないため、プレゼンはとってもラフ。全体の辻褄も合っていません。これを数時間、何回も繰り返します。数回に1回、休憩をはさむことで内容を落ち着かせ、脳に浸透させていきます。
この過程が終わるころには、プレゼンの内容がすべて頭に入っています。スライド1枚1枚の内容はもちろん、次のスライドへのつなぎ方も明確にイメージできている状態です。
もう、次の話題を思い出す時間は必要ありません。堅苦しくならずに内容を頭に叩き込めるので、私はこの方法を愛用しています。
3.感じていることを共有する
私が自分のプレゼンに自信をなくしてしまうのは、スライドの記載自体がいまいちなときか、聴衆からの決まった反応を期待してしまっているときです。
聴衆に期待通りのことを考えてもらうにはどう表現すべきか、悩んでしまうこともあります。このような悩みは、プレゼンを誰かに聞いてもらったところ、「うーん、聴いた人のほんの一部に誤解を招く可能性があるから、表現を変えた方がいいのでは?」と言われたときなどに発生します。でも、そのような言葉は無視すべきだと私は思います。
いちばん大事なことは、自分のプレゼンに満足していること。どんな話題であれ、自分がそれについてどう感じているかを本当の意味で共有することが重要なのです。決して、「正しい表現をしなくては」とピリピリしてはいけません。そんな些細なことよりも、自分の感じていることを誠実に共有することを心がけましょう。そうすれば、ストレスを大きく緩和できるはずです。
4.PowerPointには要注意
PowerPointは話す内容を忘れずに済むという意味で安心材料になり、聴衆がメモを取りやすいという点で便利なものです。
しかし、小さいフォントでたくさんの箇条書きを並べ、それを一字一句読み上げるのは避けましょう。見にくいばかりか、プレゼンが単調になってしまい、誰も耳を貸してくれなくなってしまいます。
1枚のスライドに載せるのは少しの情報に限定し、フォントはできるだけ大きくしましょう。そうすることで、聴衆の注意をひきつけられるはずです。
5.最悪の事態を繰り返さない
数か月前、Seth Godin氏のブログで、「史上最悪の事態」という記事を読みました。ちょうどテレビの生出演の準備をしていたときで、とても役に立ちました。
40年前の今日、私は初めて、人前で話すことになりました。私はそれを、「機会」ではなく、「戦い」ととらえていたのを覚えています。緊張のあまり気もそぞろで、聴衆の反応もいまひとつでした。私の初めてのスピーチは大失敗に終わったのです。
親戚や友人は口を揃えて、私がプレゼンに没頭していなかったと指摘しました。あんなパフォーマンスを繰り返してはならないと。後半は聞かなかったことにしましたが、自信と没頭について、価値ある教訓を学ぶことができました。
やる価値があることはほとんど、よりうまくやる価値があるのです。つまり、(少なくとも最初は)必ず失敗が付きものだということ。(長い目で見れば、)それは問題ではなく、1つのステップに過ぎないのです。「史上最悪の事態」を繰り返さないことを意識せずに、どうしてそれより良いものを実現できるのでしょうか。
要するに、より良いものを実現するには改善の基となる何かが必要だということです。初めてのスピーチが失敗だったからといって、あなたが話者として「失敗」なわけではありません。単に経験がなかっただけであり、改善に向けて時間を費やすことが必要なのです。最悪のシナリオを経験したあなたには、もう成長しか残されていないのです。
6.不安を克服できるのは経験だけ
最後に、人前でのスピーチで自分を保つための心理的なコツをお教えしましょう。結局のところ、不安を克服するためには経験に勝るものはないのです。とにかく人前で何度か恥をかいて、ようやく自分を保てるようになるのです。
始めるなら、今しかありません。人生には、真正面からぶつかって成長を遂げるか、一生逃げ続けるか、2つの選択肢しかないのですから。
Dan Shipper(原文/訳:堀込泰三)
http://news.goo.ne.jp/article/lifehacker/life/living/lifehacker_33934.html