医療、看護の専門家が集まり、熱中症、脱水症についての正しい情報を発信している「教えて!『かくれ脱水』委員会」によると、熱中症や脱水症に対する各世代の人たちの意識や行動の実態を明らかにするため、全国に住む男女2100人を対象に調査した結果、 以下のことが明らかになったという。
1.高齢者は熱中症対策への自負心強い傾向「自分は大丈夫」
2.熱中症の対策法について、知ってはいるけど実践しない「頭でっかち」タイプが結構多い
3.熱中症対策に敏感な人は、塩分を含む飲み物を積極的に飲んでいる
4.「熱中症になりやすいのは屋外」という認識多い
■高齢者は熱中症対策への自負心強い傾向「自分は大丈夫」
調査では、熱中症に対する高齢者の意識について、気になる結果が示された。自分が普段の生活のなかで熱中症になる可能性をどのように考えているか、各年代に質問したところ、「熱中症になる可能性はあまりないと考えている」「全くないと考えている」と答える人の割合が、年代が上になるほど高くなる傾向にあることが判明。その割合は、20代以下が36%、30代では33%、40代36%、50代38%、60代45%に対し、70代以上では51%と過半数に至っている。
これにはふたつの理由が考えられる。ひとつは、若い人と高齢者とで、熱中症の病態の重さに対する捉え方が異なること。 「あなた自身、またはご家族、知人が今まで熱中症になったことがありますか」という質問では、16~19歳の人たちの4分の1(25.0%)が「自分が熱中症になったことがある」と答えているのに対し、それが70歳以上になると10分の1(9.3%)に留まっている。これは実際の患者統計と異なる結果となりますが、この認識の違いゆえに、高齢者ほど「熱中症なんてめったにならない」「自分は大丈夫だ」と考えがちだといえるだろう。
もうひとつは、熱中症対策への自負心が強いことが挙げられます。具体的な対策法については、年代が高くなるほど、それらを認識している割合も実行している割合も高いことがわかった。「自分は熱中症にならない」という自信は、きちんと対策を施しているという自覚に裏付けられているといえる。
しかし、消防庁の統計によれば、熱中症と見られる症状で病院に搬送されている人のなかでは、高齢者の割合が高く、「自分は熱中症にならない」という思いとは裏腹に、高齢者や子どものカラダは脱水状態になりやすく、したがって熱中症も起こしやすいのだ。さらに、外的な危険因子も日常生活には潜んでいる。
たとえば、「エアコン使用は控えめにしている」という項目について、「当てはまる」「どちらかと言えば当てはまる」と答えた人の割合は、節電意識もあってか全体的に多くなっていますが、特に70歳以上では74%と高くなっている。また、ペットボトル飲料や紙パックの飲料を購入しない人の割合も、70歳以上の世代が最も高いことが判明。購入しない理由として、一番多かったのは「自宅でお茶をつくって飲むから」。熱中症を防ぐためには、水分だけでなく塩分の摂取も必要ですが、自宅でつくる麦茶などは塩分を含んでいないため、とくに脱水状態に陥っているときの水分補給としては不充分。
「熱中症は重い病気だから滅多にならない」という誤解や、「自分はしっかり対策をしているから大丈夫」という自信こそが、熱中症を重症化させる落とし穴だといえる。熱中症は誰でもなり得る病気であり、その危険因子は、気付かぬところにも潜んでいる。慢心を抱くことなく、油断せずにしっかり予防・対策を講じることが大切だ。
■熱中症の対策法について知ってはいるけど実践しない「頭でっかち」タイプが結構多い
具体的な熱中症対策法として正しいと思うことについて聞いたところ「スポーツドリンクや経口補水液など塩分を含む水分補給をする」(「正しいと思う」85.3%)、「冷房を入れる」(同60.1%)、「出かける際は帽子をかぶる」(同74.2%)といった、具体的な方策についての認識は高いことがわかった。
一方で、それらの対策を実際に行っている人は、半数~3分の2程度に留まっている。 ここから、熱中症対策についての情報は広く伝わっているものの、それが個人個人の行動につながっていないという実態が見えてくる。この結果について、同委員会の服部委員長は以下のようにコメントしている。
「わかっているけどできない、という頭でっかちタイプが意外と多い。知っているだけでは熱中症の予防につながりません」
■熱中症対策に敏感な人は、塩分を含む飲み物を積極的に飲んでいる
一方で、対策の情報を知り、しっかり対策している人たちも一定数いる。特に注目すべきが、熱中症を防ぐための水分・塩分補給について。熱中症は、発汗などによって体液を失って起こる脱水症が進行して起こる。体液はナトリウムなどの電解質を含むため、脱水症・熱中症の予防・治療のためには電解質(塩分など)の補給が必要になる。
そこで、「あなたは、熱中症対策として日頃から意識して塩分を摂っていますか」と質問したところ、「意識して摂っている」「それなりに意識して摂っている」と答えた人は、全体の4割以下に留まった。では、それらの塩分を何から摂取しているのか。
熱中症対策としての塩分摂取を意識している、していないに関わらず、もっとも多かった答えは「食事」。しかし、特徴的なのは2番目に多かった「塩分を含む飲み物」の割合。熱中症対策として塩分を摂ることを「あまり意識していない」「全く意識していない」人のうち、「塩分を含む飲み物」からと答えた割合は10~20%台。
それに対し、「それなりに意識して摂っている」人のうちの割合は58.7%、「意識して摂っている」人のうちの割合は67.0%と、高い数値を示している。ここから、脱水症対策に敏感な人は、塩分を含む飲み物を積極的に飲んでいることがわかった。この結果について、服部委員長は「喉が渇いていなくても積極的に水分補給をしましょう。脱水症一歩手前の『かくれ脱水』の状態のときは、とくに塩分を含む飲み物を選んで飲むことが大切です。脱水状態を改善するための飲み物としておすすめしたいのは、カラダへの吸収が良い形で塩分・糖分が配合された経口補水液。ドラッグストアや薬局でも販売されているので、家に常備しておくと良いでしょう」とコメントしている。
■「熱中症になりやすいのは屋外」という認識多い
ところで、熱中症はどこで多く発生しているだろうか。調査では、「屋内で空調設備の整った労働環境」「屋内で空調設備が整っていない労働環境」「屋内での労働環境」「家の中」「グラウンド」「屋外での労働環境」「車の中」「路上」の各項目について、一般的に熱中症になりやすい場所・環境がどこだと思うかを、順位づけしてもらった。それらを統合した結果、屋外の環境が上位、屋内が下位ということで、やはり多くの人が「熱中症になりやすいのは屋外」と考えているようだ。結果は、グランド78%、屋外での労働環境73%、路上41%、屋内で空調設備が整っていない労働環境46%、車の中40%、家の中17%、屋内で空調設備の整った労働環境6%、となっている。
しかし、実態は、思いのほか屋内で発生している。日本救急医学会「熱中症に関する委員会」の2010年の統計によると、スポーツなど特殊な環境以外の日常生活で起こる熱中症については、発生場所が「屋内」「日なた」「日陰」の順で患者が多かったということ。しかも、そうした日常生活で起こる熱中症は、スポーツや仕事中に発生したケースに比べ、来院時に重症化している割合が高いというデータもある。「家の中では起こりにくい」という認識が、熱中症への危険意識を低くしているのかも知れない。
◇調査概要】
調査主体:教えて!「かくれ脱水」委員会
実査期間:2013年6月19日~20日
調査方法:インターネット調査
調査対象:全国の16歳以上の男女 計2,100名
@DIME
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130814-00000304-dime-sci