[ カテゴリー:生活, 社会 ]

万引き繰り返す 精神障害

処罰より入院治療

リスクに見合わない少額の万引きを繰り返す人の中には、衝動を制御できない精神障害の一種「クレプトマニア」を患う人がいるという。この病気は処罰では再犯を防げず、専門的な治療が必要になる。群馬県渋川市の赤城高原ホスピタルの取り組みを紹介する。(佐藤光展)

■患者同士「経験」語り合い 

国内で唯一、クレプトマニアの入院治療を行う同ホスピタルと関連クリニックでは、窃盗を繰り返す約700人を診察した。クレプトマニア患者はこのうちの一部と見られるが、受診者は1対3で女性が多く、他の精神疾患を合併する例が目立つ。女性の半数近くは、拒食や過食を続ける摂食障害を合併していた。

関東地方の40歳代の女性は中学生の時、ダイエットの努力中に摂食障害に陥り、過食して吐く行為を続けた。働き始めて間もなく、スーパーで「吐くものにお金を出すのはもったいない」と感じ、パン1個をかばんに入れた。以後、お金に困ってはいないのに万引きがエスカレートしていった。

盗んだ後は罪悪感に襲われ、「いつか見つかる」と不安に駆られたが、やめられなかった。化粧品や洋服など何でも盗むようになった。「商品を前にすると、あしたからやめるので今日だけは、となってしまう。盗むことで気持ちを満たそうとしてしまうのです」と話す。

何度も見つかり、繰り返し逮捕され、4年前に実刑判決を受けた。2年弱の服役を終えた時、「もう懲り懲りだ」と思った。摂食障害は自然に治っていた。だが窃盗の病魔は去っていなかった。「1回だけ」。すぐに見つかり留置された。

この時に、弁護士に治療を勧められて、2011年夏から半年間、同ホスピタルに入院した。起訴は免れ、クレプトマニア患者が経験を語り合うミーティングや、考え方の偏りを修正する認知行動療法を連日受けた。

「ミーティングの参加者全員が、目をそらしてきた私の真の姿を映す鏡のようでした」。退院して1年半がたつが、今も定期的にミーティングに参加する。万引きはもうしていない。

「私は子どもの時から、親の考えに合わせていい子を演じてきました。そうした人間関係が成長しても続き、苦しかった。万引きは心のすき間を埋める手段だったのかもしれません」

同ホスピタル院長の竹村道夫さんは、患者に共通するこうした渇望感を「涸渇(こかつ)恐怖」と呼ぶ。患者は満たされない思いを物に投影し、盗んでより多くため込むことで自分を守ろうとしているのだという。

だが、病気でも万引きは許されない。

同ホスピタルは治療前、患者に誓約を求める。その後、万引きをした場合、必ず申告し、買い取り料に加えて迷惑料1万円を店に払う約束だ。患者はこの誓約書を持ち歩く。病院内での持ち物チェックも徹底して行っている。

6か月が基本の入院治療で、万引きをやめるきっかけを得る患者は多い。だが退院後、患者が各地で定期的に集まり、語り合う自助グループは関東と近畿に計4か所しかない。

竹村さんは「クレプトマニアは長期的ケアが欠かせない。医療機関と自助グループの整備が急務だ」と訴えている。
自助グループ
アルコール依存や薬物依存のグループは各地に多い。クレプトマニアのグループは、東京都世田谷区、横浜市保土ヶ谷区、奈良県大和高田市、神戸市中央区で活動している。開催情報などは赤城高原ホスピタルのホームページに掲載されている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130809-00010000-yomidr-hlth

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