市役所を中核とした長岡市の複合施設「アオーレ長岡」が、日本免震構造協会賞の作品賞を受賞した。市民交流の拠点、まちなかのにぎわいづくりといったソフト面だけでなく、ハード面でも評価されたことになり、行政関係者らの注目を集めている。中越地震(2004年)などの大震災を経験し、災害応急対策活動に必要な耐久性のある建物が求められる中、同市が採用した地震の力を低減する制震構造とはどんな技術なのかを調べた。【湯浅聖一】
市が今月8日にアオーレ長岡で開いた、市職員と報道関係者を対象にした制震構造概要説明会。約50人の参加者らは、西棟屋上の鉄骨屋根に設置された免震装置を感心しながら見て回った。設計を担当した江尻憲泰・長岡造形大教授は「中越地震レベルの地震に対しても安全であることを確認している」と胸を張った。
アオーレ長岡は地上4階、地下1階の鉄筋コンクリート造り(RC)の施設。屋根付き広場「ナカドマ」を中心に、市庁舎の東棟と西棟、スポーツ・イベントホールのアリーナ棟(地上3階)で構成され、ナカドマと3棟を覆う形で鉄骨屋根が設置されている。鉄骨屋根の面積は約7800平方メートル、重さは約3万8500トン。乗用車約2600台の重さになる。実はこの鉄骨屋根が制震構造の重要な役割を果たしているのだ。
鉄骨屋根と建物は22基の曲面すべり支承と、45基のダンパーと呼ばれる油圧装置を組み合わせて接合。曲面すべり支承は、フッ素樹脂製のすべり材を凹状球面板で挟んだ構造で、揺れに対して球面板が最大約40センチの幅で可動し、構造物のひずみを抑える。ダンパーは水平、鉛直方向の2種類を配置。地震の際はゆっくり伸縮し、揺れを吸収する。
江尻教授によると、鉄骨屋根が建物の重りとなり、曲面すべり支承やダンパーで振り子のように動かすことで揺れを抑制できるという。一般的に高層建物に利用される工法を低層建物に応用した。江尻教授は「大地震時の建物自体の最大揺れ幅は約16・5センチ。曲面すべり支承の可動幅はそれ以上に余裕があり、安全性を高めた」と話す。地震時の性能解析では、建物に加わる地震エネルギーが60%程度減少したという。
また、鉄骨屋根は積雪荷重や風圧に対する安全性にも考慮。ダンパーや支承が力を吸収するため、2メートルの積雪があっても耐えられるほか、建築基準法の1・6倍にあたる風圧力でも倒壊・崩壊しない設計にした。
市管財課は「大地震が発生したら、アオーレ長岡に災害対策本部が設置される。その意味で今回、制震構造が高い評価を受けたのは喜ばしいこと。今後も市民に安心して利用してもらえるようにしたい」と話している。
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