将来の学校の授業が、思考力や人間関係など、社会に出た時に役立つスキル(技能)重視へと大幅に変わるかもしれない……。文部科学省が提言する「21世紀型能力」とは何か? これからの教育はどう変わるのか? 教育ジャーナリストの渡辺敦司氏に伺った。
***
このほど文部科学省の国立教育政策研究所(国研)がまとめた報告書には、これからの社会に求められる資質・能力を「21世紀型能力」と名づけて、授業のなかで具体的に育てるカリキュラムをつくるよう提言されています。また文科省が大げさな教育改革をやろうとしているのか、と受け止められかねませんが、スキル重視は今の学習指導要領のもとでも徐々に採り入れられている考え方です。
しかも、そうした考え方は国際的にも主流になりつつあるといいます。国研の説明によると二つの流れがあり、一つは経済協力開発機構(OECD)が打ち出す「キー・コンピテンシー」、もう一つが、マイクロソフトやインテルなどが提唱して国際プロジェクトで研究されている「21世紀型スキル」です。欧米はもとよりフィンランドや韓国、台頭著しいシンガポールなども、既に何らかの形で着手しています。
では次の指導要領では、今やっているような教科がなくなってしまうのでしょうか? どうやら、そうではないようです。国研は、既に取り組んでいる国々でも独自のアプローチで試行錯誤していることを説明しながら、日本でも日本のやり方を追求することを提唱しています。既存の教科での学びを通してこそ、そうした資質・能力の育成を支えることができるのだと位置づけました。
これからの時代には、知識をたくさん覚えているだけでは通用しません。知識を活用して問題を発見し、正解のない問いに対して、自分なりに解決策を見いだすことが、いっそう重視されます。そのためには「基礎力」(言語スキル・数量スキル・情報スキル)を基にしながら「思考力」(考える力)を駆使し、「実践力」につなげることが必要で、それが「日本型資質・能力」の枠組みになるのではないか……と、国研では考えています。
今後は同じ教科の授業をしていても、授業のねらいや展開はまったく変わってくる可能性があります。変化の激しい21世紀を担う子どもたちには、それにふさわしい新しい能力を身につけてもらう必要があるのです。
ベネッセ教育情報サイト
http://news.goo.ne.jp/article/benesse/life/education/benesse-8567.html