「最近、相続や贈与に関する相談が増えています。今日は相続税の節税につながる生前贈与についてお話しします」
ランドマーク税理士法人「丸の内相続プラザ」(東京都千代田区)で今月4日に行われた相続関連のセミナー。参加者らはメモを取りながら熱心に講師の話に聞き入っていた。荒川区から来た主婦(56)は「節税対策に加え、子供たちがもめないようにしっかり備えておきたい」と話していた。
◆評価額を一覧に
「『築いた財産をどう引き継ぐか』は終活の大きなテーマの一つ。残された家族が困らないよう、財産の多寡にかかわらず対策しておくことが望ましい」。相続に詳しい同税理士法人の清田幸弘(せいた・ゆきひろ)代表税理士はこう力を込める。
清田さんによると相続対策のポイントは、(1)分割対策(2)節税対策(3)納税資金対策-の3つ。(1)は財産を持つ全ての人に関係する。
「法定相続人が法定相続分を相続する」というのが最も基本的な相続方法。ただ、主な相続財産が不動産であるため分割しにくい▽父親を介護していた兄が「多めに財産を相続したい」と望んだ-場合などはこじれがちだ。家族間で遺産を争う「争族(そうぞく)」に発展することも少なくない。清田さんは「『家族仲が良いから心配ない』と考えるのは危険」と警告する。
税制改正で平成27年1月から、相続財産の一定額まで相続税がかからない「基礎控除額」が引き下げられるため、(2)や(3)の対策が必要となる人も増える見通しだ。
具体的な対策は-。
清田さんは「父親など財産を残す側は財産内容を把握し、整理しておきたい」と話す。預貯金や有価証券などの「動産」、自宅や店舗、賃貸アパートなどの「不動産」、借金などの「マイナス資産」を洗い出し、評価額を計算したうえで一覧にしておく。評価額が出れば相続税の対象かどうかも判明する。生前贈与や生命保険金の活用など節税や納税資金の対策にも取り組める。
◆公正証書遺言で
法定相続人を確認し、分割方法を決めておくことも重要だ。自分の意思を反映したい場合は遺言書の活用が有効。「事業を継ぐ子供に多めに相続させたい」「事実婚の妻に財産を残したい」場合などは作成しておきたい。
遺言書には自筆証書遺言と公正証書遺言があるが、ランドマーク行政書士法人(横浜市緑区)の薄葉季之(うすば・としゆき)行政書士は「安全で法的根拠能力の高い公正証書遺言がお勧め」と話す。自筆証書遺言は1人で簡単に作成できるが、偽造されたり様式の不備により無効となったりする可能性があるという。一方、公正証書遺言は2人以上の証人の立ち会いのもと公証人が作成するため、費用や手間はかかるもののトラブルのリスクは少ない。
作成時は法定相続人に最低限保証されている「遺留分」を考慮したうえで、遺族がなるべく不公平感を抱かない分割方法を心掛ける。薄葉さんは「遺言は大切な人への最後のメッセージ。何度でも書き直せるので、相続を意識したらすぐに書いてみては」と話している。(竹岡伸晃が担当しました)
■相続税の基礎控除額
現在の基礎控除額は「5000万円+1000万円×法定相続人数」。平成27年1月からは「3000万円+600万円×法定相続人数」となる。法定相続人が3人の場合、現在は相続財産が8000万円までは相続税がかからないが、27年1月以降は4800万円から税金がかかる。「地価の高い都市部に家があるだけで課税対象となる可能性がある」(清田さん)
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/life/medical/snk20130714568.html