中国で今年3月、鳥インフルエンザウイルス(H7N9型)が人に感染したことが初めて確認されました。
これまでに上海、北京、浙江省など中国国内の2市8省、台湾で計133人が感染し、うち39人が亡くなっています。感染者の特徴や日本の態勢など、現状をまとめました。
――H7N9型とはどのようなウイルスなのですか。
「季節性のA香港型(H3N2)や、2009年に新型として大流行したH1N1型のようなA型ウイルスの一種です。A型は、人だけではなくニワトリやブタなど、様々な動物に感染します」
「H7N9型ウイルスは、3種類の鳥のウイルスの遺伝子が混ざってできたと考えられています」
――どのように感染したのでしょうか。
「中国では、ニワトリやカモ、ハトなどの生きた家禽(かきん)類を売買する市場が各地に多数あり、市場には鳥肉を調理する飲食店関係者、一般人も盛んに出入りしています。患者の半数以上が2週間以内に、これらの生きた家禽類と接触していたとの報告もあります。市場を一時的に閉鎖したところ、その後の新規患者が激減したため、市場の生きた鳥が感染源ではないかとの見方もあります」
――感染者にはどのような症状が出るのでしょうか。
「発熱やせきなどは、季節性インフルエンザと変わりません。ただ、H7N9型ウイルスでは、高齢患者の割合が高く、また、人工呼吸器の装着が必要になる重症者が多いことも分かっています。患者111人を対象にした調査によると、平均年齢は61歳。65歳以上が47人(42%)に上る
一方、14歳以下は2人(2%)です。8割近くの85人が集中治療室(ICU)で治療を受けています」
――どのように治療するのでしょうか。
「季節性のインフルエンザの治療では、発症から48時間以内に抗ウイルス薬を使うことが有効ですが、この調査によると、治療の開始時期は発症から平均7日でした。専門家は『早期に治療を始めれば、重症化を防げるはずだ』と指摘しています」
「ただ、別の調査では、48時間以内に抗ウイルス薬を投与されても回復せず、重度の肺炎を起こした患者の症例も報告されています。検出したウイルスを調べると、抗ウイルス薬が効かないように変異を起こしていたことが分かっています」
――日本では、どう対応しているのですか。
「国は今年5月、空港などの検疫所で感染が疑われる人に対して検査や診察などを行える『検疫感染症』に指定しました。中国から入国し、インフルエンザが疑われる症状がある人が対象です。さらに、感染の拡大を防ぐために、感染症法に基づく『指定感染症』と定めました。感染が確認された人には最長2年間、強制的な入院措置や就業制限などが可能になります」
「また、日本感染症学会は、H7N9型ウイルスに感染した患者に対する暫定的な診療指針をまとめました。重症患者が多いため、治療は飲み薬のタミフルか、点滴薬のラピアクタを使い、投与量や投与期間を通常量の2倍に増やすことを求めています。重症肺炎の併発も多く、粉末薬を吸引しても患部に行き届かず、効果が十分に得られないおそれもあるため、リレンザ、イナビルは推奨していません」
――今後、日本でも流行する可能性はありますか。
「中国の感染者の報告は終息傾向にありますが、感染源、感染経路は現時点でも明確には分かっていません。中国から戻った台湾人男性の感染が4月下旬に判明しましたが、日本でも起こりえます。気を緩めるべきではありません」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130625-00010000-yomidr-hlth










