幼稚園や保育園で頻繁に流行が見られる水痘(水ぼうそう)とおたふく風邪(ムンプス、流行性耳下腺炎)。かかってもそれほど重くならない子供が多いとはいえ、重症化し、後遺症が出たり死亡したりする場合もある。国は、これらの感染症を予防するワクチンの定期接種化を目指して調整中だが、小児科医は「1歳になったらできるだけ早く受けてほしい」と呼び掛けている。(平沢裕子)
◆年間20人以上死亡
水痘は水痘帯状疱疹(ほうしん)ウイルスによって引き起こされる感染症。2~3週間の潜伏期の後に熱が出て、体に虫さされのような赤い斑点が出てくる。日本では年間約100万人が発症、約4千人が重症化、または脳炎や肺炎などの重い合併症で入院し、20人以上が死亡している。幼稚園や保育園ではかかったら約1週間は子供を休ませないといけない。しかし、任意接種ということもあり、予防のためのワクチン接種率は約30%と低く、抵抗力を持っていない子供たちが多い。
防衛医科大学小児科学講座の野々山恵章教授は「海外から日本は水痘の流行地と見られている。幼稚園や学校で季節に関係なく集団発生することは珍しくない」と指摘する。
◆難聴の後遺症
一方、おたふく風邪はムンプスウイルスによる感染症。やはり2~3週間の潜伏期の後、耳下腺(耳の下にある唾液腺)が腫れる。日本では年間約50万人が発症する。
おたふく風邪を予防するムンプスワクチンは、昭和63年に麻疹と風疹の混合ワクチン(MMRワクチン)として定期接種となったことがある。しかし、ムンプスワクチンを原因とする無菌性髄膜炎が高い頻度で出たとして5年後に中止となり、現在は自己負担で打つ任意接種だ。予防のためのワクチンで無菌性髄膜炎になると聞けば、ワクチン接種をためらう保護者もいるかもしれない。
『予防接種に関するQ&A集』(日本ワクチン産業協会)によると、ムンプスワクチンで無菌性髄膜炎になる確率は0・03~0・06%。自然におたふく風邪を発症した場合に無菌性髄膜炎になる約10%に比べればかなり低い。同じ髄膜炎の合併症といえ、ワクチンによるものは軽く後遺症も残らないが、自然に罹患(りかん)した場合は脳炎・脳症で入院したり、死亡するケースもある。
「ワクチンの副反応が心配だからと、自然にかかるのを待つのは間違い。ワクチンを打たないことで多くの子供が重篤な合併症に苦しんでいる事実を知ってほしい」(野々山教授)
また、おたふく風邪患者の約250人に1人の割合で一生治らない難聴になり、日本では年間約500人が難聴になっているとみられ、これも大きな問題だ。
◆定期接種を提言
公的補助がない任意接種のこの2ワクチンについて、厚生労働省の厚生科学審議会予防接種部会は定期接種とするよう提言しており、国は現在、実施を目指して調整中だ。
野々山教授は「ほとんどの子供がワクチン接種している米国では、水痘とおたふく風邪の患者はほぼ消失している。子供の未来を守るため、定期・任意接種どちらのワクチンも積極的に受けてほしい」と話している。
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/life/snk20130613513.html