常連さんとの世間話が得意の昔ながらの理容店が、自殺の兆候をキャッチして防止する「ゲートキーパー」役を買って出る活動が各地で広がっている。旗振り役の全国理容生活衛生同業組合連合会(東京都)は「理容店は減少傾向だが、新たな社会貢献で存在感を示したい」と話している。【土本匡孝、安達一正】
理容師は、理髪の間に1時間近く、常連客の顔を見ながら会話するため、ゲートキーパーに適している。同連合会によると、富山市で数年前、理美容店が悩んだ様子の客を心療内科に紹介し、回復した例があったという。
これに着目した同連合会が昨年、各都道府県の組合に講習会の開催を呼びかけ、2012年度中に全国で少なくとも2万4585人の理容師が参加した。
愛知県の組合も講習会を開催し、12年度には県内の組合員約4000人のうち1759人が受講して、客への接し方などを学んだ。
受講した名古屋市緑区桃山で理容店を営む福安良真(よしまさ)さん(58)は「自殺予防と聞いて自分に何ができるのかと不安だったが、講習会では、お客様の話をしっかり聞くことの大切さを改めて学んだ。サービス業の基本を日常的にさりげなく実践すれば良い」と語る。受講後は行政機関の相談先電話番号の一覧を自分でチラシにまとめてレジ脇に置き、いざという時には渡せるようにしている。客の9割は常連客で、「ちょっとした変化も気付きやすく、心配な人には、見守りながらタイミングをみて声をかけていきたい」と意気込みを語った。
同連合会によると、11年度の全国の店舗数は13万1687店で、ここ10年間で約1万店減少した。
【ことば】ゲートキーパー
英語で「門番」の意味。自殺を考えるほど悩んでいる人に気付き、話を聞いて必要な支援につなげる人を指す。特別な資格ではなく、2007年の国の自殺総合対策大綱で重点施策の一つに掲げられ、内閣府がテキストを作成するなど養成を促進している。
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/nation/20130608k0000e040220000c.html