[ カテゴリー:生活, 社会 ]

逆に避難妨げる?ハザードマップ

南海トラフ巨大地震 ハザードマップ「逆に非難を妨げる」との見方

32万人の犠牲者が想定される「南海トラフ巨大地震」に関しては、昨年7月に公表された中間報告などで、「人命確保」を第一に、迅速な住民避難を促すことがうたわれている。しかし、避難促進を目的に、国が自治体に、住民への周知を求めるハザードマップ(浸水域想定図)について、専門家から「逆に避難を妨げる」として、厳しい見方が出ている。(記事・北村理、デザイン・佐倉潔)

◆根幹は意識改革

「災害に向き合える国民強靱(きょうじん)化を目指すべきだ」。先月11日の衆院予算委で、群馬大の片田敏孝教授は「国民の意識改革が津波地震対策の根幹」と主張した。片田教授は、岩手県釜石市の小中学生ほぼ全員約3000人が避難した「釜石の奇跡」の立役者。冒頭の発言は釜石での10年間の防災教育・訓練の取り組みを背景にしたものだ。

この発言を裏付けるように、昨年6月の災害対策基本法の改正では、釜石にならい、防災意識の向上を「住民の責務」とした。

こうした中、「南海トラフ巨大地震」の対策が検討されてきたが、昨年7月に公表された「中間報告」で、「安全で確実な避難の確保」の項目の第1項で掲げられたのが「ハザードマップ等の整備促進」だった。

◆「安全」思い込み

ハザードマップについて、片田教授は「マップは特定の被災モデル下で、浸水域とそうでない地域が明確に表現される。居住地が浸水域でない住民は『安全だ』と思い込む傾向が非常に強い」と指摘する。

実際、片田教授が、東日本大震災で約1000人の死者・行方不明者を出した釜石市で、犠牲者868人について、居住地を調べたところ、「居住地が浸水想定域の外にあった住民の死者数は、浸水域内にあった住民のほぼ2倍となっている。明らかに、浸水域外の住民は逃げていない」。

この傾向は、片田教授が釜石市の生存者を対象に行った調査でも明らかになった。「浸水域外の住民」のうち、東日本大震災の際「逃げる必要をとても感じた」と回答したのは36・8%で「浸水域内の住民」の53・4%を下回った。

◆避難考える動機に

これでは、国が普及を目指すハザードマップが、かえって逆の効果をもたらしていることになる。

なぜこうなるのか。

片田教授は、その理由について、「従来のハザードマップは行政からの一方通行の情報であり、配布しているだけでは、住民は自己都合で勝手に解釈してしまうからだ」と指摘する。浸水域外の住民が「安全だ」と思い込むのはその典型だ。

そこで、片田教授は、ハザードマップの情報をベースに、住民自らが個々人の生活状況や体力に応じ、居住地で実現可能な避難経路を考え、その情報を上書きしていくことで、地域のなかでの住民の安全度が分かる「新型ハザードマップ」を手がけている。ここでは、住民が工夫すればするほど安全度が上がり、「自ら避難を考えようという動機付けになる」という。

当然、安全度をアップさせるには、既存の避難路や避難施設では安全な避難が必ずしも可能でないことも分かってくる。

そうした場合、地域の自主防災会や自治会を舞台に、住民どうしが新たな避難路や避難施設をどうするか知恵を出し合い、行政に協力を求め、安全な地域づくりを実現するきっかけにもなる。片田教授は「広域に被害をもたらす巨大災害では、行政が住民を守るという構図は成り立たない。住民は自分で自分の命を守る算段をしなくてはいけない」と今後の対策のあり方を主張。

住民が自ら防災行動を起こすためには、「行政からの一方通行の情報提供はいかに精緻化しても、住民の情報依存をもたらし、迅速な避難を妨げる。住民と同じ目線にたち住民と繰り返し意見交換することで役割を見いだすべきだ」としている。

【用語解説】ハザードマップ

水防法により、国などの河川管理者から示された浸水想定区域図をもとに、市町村が避難場所の情報などを加味し、住民に公表することが義務づけられている。平成6年以降、現在までに全市町村の9割以上が策定している。しかし、津波のマップについては、24年の総務省消防庁の全国市町村約670(回答率72.8%)への調査によると、488市町村(23が内陸)のうち、大震災以前から策定していたのは50%にとどまっていた。また、大震災後、新たに策定したのは7.2%、修正したのは3.3%だった。

http://news.goo.ne.jp/article/sankei/nation/snk20130529502.html

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