致死率が5割に上る新型のコロナウイルスの感染が中東から欧州に拡大し、日本国内でも感染者を早期に発見する態勢を整えるなど、対応に着手した。世界保健機関(WHO)によると、24日までに8カ国で44人の感染が確認され、22人が死亡。厚生労働省は24日、ウイルスを「MERS(マーズ=中東呼吸器症候群)コロナウイルス」と呼ぶことを決め、日本での発生に警戒を強めている。
コロナウイルスは一般的な風邪のウイルスだが、変異して病原性が強まる可能性があり、2003年に流行し高い致死率で恐れられた「SARS(新型肺炎)」の原因は新型コロナウイルスだった。日本では感染者は出なかったが、中国を中心に世界で700人以上が死亡した。
今回、感染が広がっているのはSARSウイルスとは異なる新しいコロナウイルスで、昨年4月ごろ初めて人に感染した。流行はサウジアラビアなど中東が中心だったが、ヨーロッパから中東への旅行者が帰国後に発症。家族も発症するなどして、ヨーロッパでも感染が拡大した。今年5月に入ってからは、27人が感染し、勢いが増している。
症状は熱やせき、下痢などで、重篤な肺炎や呼吸器障害を起こして死に至る。コウモリから人に感染したという説もあるが、中東での感染源は不明で、ワクチンなどの治療法はない。国立感染症研究所の松山州徳(しゅうとく)室長は「広い地域で散発的に患者が発生しているが、その理由は不明だ。人から人の感染がかなり広がっている可能性もある」と指摘する。
専門家によると、世界では平均して年間1種類の新しい感染症が出現している。流行が広がる前に患者を発見し隔離、治療を施すことが重要で、厚労省は1月、全国の地方衛生研究所にMERSコロナウイルスを検出できる検査キットを配布。感染者をすぐに確認できるようにしている。松山室長は「MERSコロナウイルスは、ノロウイルスのような強い感染力はない」として、手洗いやうがいなど通常の感染症対策を呼びかける。
一方、鳥インフルH7N9型の感染は収まってきた。24日までに中国の2市8省と台湾で131人が感染、36人が死亡したが、WHOが7日に患者2人を報告したのを最後に新たな患者の発生はない。しかし、秋から冬にかけて増える可能性があり、厚労省は引き続き警戒している。
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/life/medical/snk20130525091.html