電車やバスに乗るのが難しい高齢者が、通院する際などに利用するのが、車で送迎してくれる「移動サービス」だ。
車いすごと乗車できたり、乗降時に介助してもらえたり――。よく確認し、本人に合ったサービス内容を選びたい。
東京都世田谷区のNPO法人「せたがや移動ケア」は、区民から高齢者や障害者の移動サービスに関する相談を受けている。相談する高齢者の多くが「通院のため」の利用を考えている。墓参りや、孫の運動会、観光したいという希望もあるという。
移動サービスを提供している事業者は様々だ。NPOや一般のタクシー会社のほか、福祉専門に輸送事業を行う会社もある。使う車の種類やサービス内容は、事業者ごとに異なる。
東京都杉並区内の相談業務を行っている、杉並区移動サービス情報センターの秋山糸織さんは、「申し込む前に、希望通りに対応してもらえるのか、事業者にサービス内容をしっかり確認しましょう」と助言する。
まず、車のタイプ。車いすやストレッチャー(車輪付きの簡易ベッド)ごと乗車できる福祉車両を用意している事業者もあれば、普通のセダンの車を使う事業者もある。高齢者本人の体の状態をみながら決めたい。
介助を頼めるのかについても確認することが大切だ。乗車の際の手伝い程度なのか。ベッドから車いすへの移動や、集合住宅の階段の昇降も介助してくれるのか。例えば、車いすで階段を昇降する場合などは、複数人での介助や、昇降用機材が必要なこともある。申し込み時には、玄関周りの段差や階段の有無なども伝えて、事業者に対応できるか聞く。
事業者のうち、最近は、福祉専門の輸送事業(介護タクシー)を行う会社が増えている。福祉車両によるサービスで、予約してから利用する。運賃の目安は一般のタクシー料金と同程度。予約料金や介助の料金も事業者によって異なる。
NPOの移動サービスは、福祉車両と普通の車と両方のケースがある。運賃はタクシーの半額程度だが、一般に会員登録と年会費が必要になる。東京都多摩市のNPO法人「ハンディキャブゆづり葉」の杉本依子さんは、「人工透析の通院など、継続して利用する場合には、NPOが適していると思う」と話す。
秋山さんは、「介助も含めて全体でかかる費用を比較し、利用する事業者を決めましょう」と話す。
要介護認定を受けている人なら、車に乗る前後に必要な介助を、介護保険のケアプランに組み込むこともできる。ただし、外出の目的が通院などに限定され、介護保険に対応できる特定の事業者にしか頼めない。運賃に介護保険は適用されない。
地域の移動サービスについては、地域包括支援センターや自治体の福祉関係部署に問い合わせる。
また、NPO法人全国移動サービスネットワーク(東京)では、全国のNPOによる移動サービスを紹介している。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130524-00010000-yomidr-hlth