うがいと言えば、風邪の予防や、のどの痛みを和らげるというイメージがありますが、「うがいは口の中の悪い細菌を除去して清潔にする効果があるので、いろいろな症状の緩和に有効です。
うがい薬を上手に使って口腔内の環境を整えましょう」と話すのは、歯学博士で歯科・口腔(こうくう)衛生外科の江上歯科(大阪市北区)院長・江上一郎先生。うがいの効用と正しいうがいの仕方について伺いました。
■うがいは、口とのどを分けてゆすぐ
「うがいは、のど周辺の炎症の緩和のためだけと考えられがちですが、口内炎、花粉症の予防、歯を抜いた後の感染予防、へん桃(とう)炎、口腔の消毒や洗浄などの目的でも効果があります。ですから、風邪をひいたときだけでなく、日常的にうがいをすることをお勧めします」と、江上先生。
ロの中には200種以上の細菌が存在すると聞きますが、うがいでそれらを除去できるのでしょうか。江上先生は、次のように説明します。
「細菌は、口の中で共生しています。この細菌は適切な条件で生息している限り、宿主である私たちの体をむやみに攻撃することはありません。例えば、健康な大腸の中にも多くの腸内細菌が住んでいますが、医学的にはその細菌によって私たちの健康が保たれています。
ですが、口の中には、歯や歯肉のまわりに付着する細菌がいます。この細菌とその代謝物のかたまりを歯垢(しこう・プラーク)と呼び、このプラークはむし歯や歯周病の原因になります。ですから、意識をして口の中の環境を整えることが大切です。
うがいでは、歯ブラシのように完全にプラークを取ることはできませんが、ある程度の大まかな汚れを除去し、清潔にすることができます」
では、効果的なうがいの方法はあるのでしょうか?
「1日3~4回、口とのどを分けてゆすぐことです。コップに水またはぬるま湯を用意し、正面を向いたまま『グジュグジュ』っと口の中をゆすぎます。当院ではこれを『ブクブクうがい』と呼んでいます。口の中の食べかすなどを流すことが目的です。
続いて、水を含んで顔を天井に向けて、口を開けながら『あー』や『がー』と声を出して約15秒のどをゆすぎ、もう一度繰り返します。こちらを『ガラガラうがい』と呼んでいますが、のどを水で潤して、ほこりやばい菌などを洗い流すことが目的です。
のどの奥深くまで届くように意識をしてうがいをすると効果的です」(江上先生)
■含漱剤(がんそうざい)と洗口液を使い分けて口の中をケアする
さらに、うがい薬の使用方法と注意事項を江上先生にお聞きしました。
「炎症のある病的な状態のときに使用するうがい薬を『含漱剤(がんそうざい)』と呼びますが、これは、医薬品である『イソジン』や『アズレン』などの殺菌消毒効果があるタイプです。主に抜歯後や手術後、口内炎やのどの痛みなど、炎症があるときに使用します。特に、口内炎は殺菌消毒してから塗り薬を使うと効果的です。
ただし含漱剤は、口の中の常在菌にも作用するので、日常的なうがいでの使用はお勧めできません。日常的には、医薬部外品や化粧品の扱いになる『洗口液(せんこうえき)』を使ってください。
含漱剤では殺菌効果が強すぎて、菌交代現象(その薬剤に対する耐性菌が異常に増殖する現象)やアレルギーが起こる可能性がありますが、そうしたことがない洗口液もあります。例えば当院で使用している『プロフレッシュ』の場合、歯周病や口臭を起こす嫌気性菌(けんきせいきん・酸素のない条件下で生育する細菌)に酸素を供給して、菌の増殖を押さえます。常在菌には作用せず、口臭ケアや花粉症などに対応します。
なお含漱剤には、そのまま用いるタイプと、薄めて、あるいは溶かして用いるタイプがあります。後者の場合は、薬袋の説明書の指示にしたがって、その都度うがい液を作って使い切るようにしてください。時間が経つと効果が薄れてしまいます。
また含漱剤や洗口液を使う場合も、基本の動作は同じです。『ブクブクうがい』と『ガラガラうがい』で、口の中とのどの奥をしっかりと洗い流しましょう」
うがい薬を使うのが面倒なとき、水だけのうがいでも効果はありますか。
「もちろんあります。手を洗うときに同時にうがいをする、という習慣を身に付けましょう」(江上先生)
こうしてお話を伺うと、うがいは思いのほか奥が深いようで、日ごろからうがいをすることの重要性が分かりました。「口とのどを洗い流す」ことを意識し、口内炎や口臭予防にも役立てたいものです。
監修:江上一郎氏。歯学博士。専門は口腔(こうくう)衛生。歯科・歯科口腔外科の江上歯科院長。
江上歯科 大阪市北区中津3-6-6 阪急中津駅から徒歩1分、御堂筋線中津駅から徒歩4分 TEL:06-6371-8902 http://www.egami.ne.jp/
(岩田なつき/ユンブル)
マイナビウーマン
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