超高齢社会を迎える中、よりよい年の取り方を解明する「老年学研究会」を大阪大が今春設立し、これまでの研究成果を報告する第1回シンポジウムを12日、阪大吹田キャンパス(大阪府吹田市)で開いた。研究会は大学院の医学系、歯学、人間科学の3研究科を中心に発足。異なった研究領域が協調する学際研究として、身体的な健康・長寿に加え、心の健康を保つ条件も探る全国でも珍しい取り組みという。
老年学は、20世紀初頭にドイツの免疫学者によって提唱された比較的新しい学問分野。医、心理、社会学など多彩なアプローチから加齢について研究し、老化によって起こる変化や、高齢者の増加が社会に与える影響などを研究する。日本では東京大などで学部横断的な研究が行われているが、まだ数は少ない。
阪大の3研究科は、平成22年から東京都健康長寿医療センター、慶応大と連携。兵庫と東京の70~90代の約2300人を対象に「健康長寿研究」として、運動機能や歯の状況、認知機能や現在の生活への満足度などを調べており、80代以上の高齢者を対象とした研究としては国内最大規模という。
20年間にわたり、各人の変化を追跡調査する予定で、生活習慣病や歯周病、感情のコントロールなどに、加齢がどのように影響するのかといった点の解明を目指すという。
研究責任者で、阪大臨床生死学・老年行動学研究分野の権藤恭之准教授は「阪大でもこれまでバラバラにやってきた高齢者問題だが、広い研究領域で研究すれば新しい事実が分かる」と研究会設立の意義を語る。
老化は身体的機能の衰えだけでなく、社会との関わりの変化など複雑なプロセスが関連するといい、「老化についてトータルな研究を行うことで、高齢者の方によりよい生活を送ってもらえることができるようになる」と話している。
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/life/medical/snk20130513500.html