小学6年と中学3年を対象にした全国学力テストが、4年ぶりに全員参加方式で行われた。約3万校の228万人が、国語と算数・数学の問題に取り組んだ。
全員参加方式の復活により、教育委員会や学校は、子供たちの学力状況を正確に把握できる。課題を見つけ、指導の改善に役立てていく必要がある。
全国学力テストは、学力向上策の一環として2007年度から始まり、09年度までの3年間は、全員参加方式で実施されていた。
ところが、民主党政権は経費削減を理由に、全小中学校から3割を抽出する方式に切り替えた。有力支持団体である日本教職員組合の「競争をあおる」といった批判に配慮し過ぎた結果だ。
その弊害は大きかった。抽出調査では都道府県別の平均正答率しかわからない。市町村別や学校別のデータは途切れてしまった。
抽出に漏れた学校には希望参加の道が残されたが、採点は独自に行わねばならなかった。同じテストなのに、抽出校との不公平が生じたことも見過ごせない。
政権交代後、安倍政権が再び全員参加方式で毎年実施することにしたのは、適切な判断である。
今後、大切なのは、テストで得られる膨大なデータを様々な角度から分析し、児童・生徒の学力向上につなげることだ。
文部科学省は、少人数学級を導入している学校と、そうでない学校の成績を比較し、学力との関連性を検証する。クラスの適正な人数は何人程度なのかを実証的に示した上で、必要な教員数を確保していくことが求められよう。
全員参加で問題となるのが、テスト結果の公表方法だ。
文科省は実施要領で、都道府県教委には市町村別と学校別、市町村教委には学校別の結果の公表を禁じている。過度な競争や序列化を防ぐとの理由からだ。
これに対し、保護者などへの説明責任を果たす立場から、一部の自治体は公表を希望している。過去には情報公開請求に応じて、市町村別の平均正答率などが開示されたケースもある。
テストの実施には55億円の国費が使われている。学力を映し出す貴重な情報を教委で独占するのではなく、保護者や地域住民と共有してこそ、学校運営への理解と協力も得られるのではないか。
文科省は来年度以降の公表の仕方について、自治体の意見も聞きながら検討する方針だ。公表規制の見直しを図るべきだろう。
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/life/education/20130512-567-OYT1T01046.html