従業員の生活習慣を改善し、健康増進を図ろうという企業の取り組みが広まっている。
仕事の効率などに好影響が見込まれるほか、生活習慣病の予防により、経営を圧迫している健康保険組合の財政改善が期待できるためだ。
ランチタイムの従業員たちが、ショーケースに並んだ総菜を自由に注文し、調理スタッフが盛り付けていく。どのプレートにも野菜がたっぷりだ。東京・港区の日本マイクロソフト本社の社員食堂。1年半前、定食や小鉢を選び取る形式から、このデリカテッセン形式に変え、同時に野菜の多い健康メニューに改めた。「野菜使用量は普通の3~4倍。周囲に飲食店は多いが、新鮮な野菜は差別化にもつながる」と、管理本部の長坂将光さんは話す。
健康メニューは、社食の運営会社エームサービスの栄養士らの協力で実現した。昨年春には、栄養バランスが良く、カロリーを抑えた日替わりの特別メニューを自動的に提供する「健康プログラム」も企画。健康診断で食生活の改善が必要と判定された人には人事部門から個別に促すなどして、73人が専用の回数券を購入して参加した。保健師による健康指導も行い、参加者は平均2キロ・グラムの減量に成功した。体脂肪率が大幅に低下した加来忠師さん(47)は、「以前は脂っこいものを選びがちだったが、体にいい組み合わせが分かってきた」と話す。
メニュー表には、カロリーや塩分、脂質などの数値が表示されており、健康的な食事の組み合わせ方が自然に身につく効果もある。「会食など社外で食事する際も、社食での食育が生きてくる」(長坂さん)
「体重が少しずつ減ってきた。メタボの基準を超えていたウエスト回りも、82センチ・メートルまで細くなった」。三井化学アグロに勤務する貴志淳郎さん(49)は、三井化学がグループで展開する「ヘルシーマイレージ合戦」の効果を実感する。
1日の運動時間や歩数などを自席のパソコンで入力すると、ポイントが自動集計され、3か月の期間中に一定の条件を満たせば賞品をもらえる。社内のフィットネス教室への参加や減量、禁煙の成功などでポイントが加算される。航空会社のマイレージ・プログラムのように、ためる楽しみを味わいながら積極的に健康づくりに取り組める。「メタボ予防には、多くの人に健康プログラムに参加してもらうことが重要」と、本社健康管理室長で統括産業医の土肥誠太郎さん。2年前に全社的にスタートし、年2回、約1000人が参加する。
アンケートでは参加者の78%が、「終了後も運動習慣が定着している」と回答。社員の生活習慣や意識の改善につながっている。
健康増進の取り組みは、企業にどんな効果をもたらしているか。
三菱電機は2002年度から、「グループヘルスプラン21」と銘打ち、
〈1〉適正体重を維持する人
〈2〉一定の運動習慣のある人
〈3〉喫煙者
――など5項目の割合に数値目標を設け、生活習慣の見直しに取り組んできた。
加入者が20万人超の三菱電機健康保険組合が支出する医療費は年310億円で、3分の1弱が生活習慣病。取り組みを続けてきたことで、07年度以降、医療費を年十数億円削減できたと推計する。健保組合の大森義文事務局長は、「例えば、喫煙者は1万人以上減っており、将来の医療費を押し下げる。保険料の値上げが遅くなれば、会社にも従業員にも望ましい」と話す。
若年層も含め、健康診断では異常がないが、生活習慣に問題があり、将来、健康状態が悪化する恐れがある人が主なターゲットだ。事業所ごとに、健康状態の調査結果や医療費の分析などを定期的にデータで示すことで競争意識も働き、昼休みのウオーキングや歯磨きが広まったという。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130502-00010000-yomidr-hlth
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