今年10月から2015年4月までの間、3回に分けて年金の受給額が引き下げられる。
年金は、物価の変動を反映して受給額が変わる。物価が上がれば、その分年金も増え、下がれば減る仕組みになっている。ところが、00年度から02年度にかけて物価が下がったのにもかかわらず、受給額は据え置かれた。政府が高齢者の暮らしに配慮した措置で、現在の受給額は本来の算出額より2・5%高い水準だ。
この状況を是正するため、今年10月に1%、14年4月に1%、15年4月に0・5%、受給額がそれぞれ引き下げられる。
今後2年間、物価が変わらないと仮定すると、基礎年金を満額受給している人は、月6万5541円の受給額が10月に6万4875円、14年4月に6万4200円、15年4月に6万3866円にそれぞれ減り、15年度は現在より年間2万100円の減額となる。
厚生年金はどうか。40年間会社員だった夫と専業主婦の妻という標準的な世帯では、月23万940円の受給額が10月に22万8591円、14年4月に22万6216円、15年4月に22万5040円となり、今より年間7万800円減る。
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さらに15年4月以降、物価が上昇に転じても、受給額の増加率は物価上昇率を0・9%程度下回る仕組みになっている。「マクロ経済スライド」と呼ばれる方式で、例えば、政府の目指す2%の物価上昇が実現しても、年金は1・1%程度しか増えず、年金の実質的な価値は目減りする。
年金生活者にとって、大きな収入増が見込めない上、電気代やガス代、食料品などの値上げも家計を圧迫しかねない。日本総合研究所によると、今年度、光熱費は5・1%、生鮮品を除く食料は0・7%値上がりする見込みだ。
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では、どのような対策があるのか。「残念ながら特効薬はありません。支出を一つずつ見直し、隠れた無駄を改めましょう」と消費生活アドバイザーの和田由貴さんは話す。
例えば、値上げを見越した駆け込み的な買い物は、無駄遣いにつながることがある。購入前に、本当に必要かどうかを見極めたい。スーパーの特売などで食料品をまとめ買いするのも、夫婦だけのシニア世帯では、食べきれず無駄にしやすい。「精肉や総菜などで、夕方過ぎに値下げされた『見切り品』も、意外と食べ残しがち。目先の安さに惑わされないでください」
家電製品の使い方も考えたい。テレビなどはつけっぱなしにしていないかをこまめに確認する。炊飯器は長時間、保温にしない。ガス給湯器のスイッチもこまめに切ると、電気もガスも節約できる。
和田さんによると、古い冷蔵庫やエアコンは、最新型に切り替えると電気代を大幅に減らせる。「購入費はかかりますが、長い目で見れば元がとれます。今の機器は性能が上がり、暮らしも快適になるので、10年以上使っている家電は、買い替えを検討してもいいでしょう」
年金額の抑制は、年金財政の悪化に対応したもので、少子高齢化が進む中では避けられない。これから年金を受け取る世代も、将来の受給額を試算するなど、年金暮らしを見すえた生活設計に取り組みたい。
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