日本語教師を目指すシニアが増えている。「国際交流に役立ちたい」「海外で暮らしたい」などの理由が多いという。実際に海外で暮らす教師たちは旺盛なチャレンジ精神で、定年後の第二の人生を満喫しているようだ。(村島有紀)
◆4人に1人
日本語を教えるための国家資格はないが、国内の日本語学校などでは、大学で日本語教育を履修▽文部科学省が定める日本語教師養成講座420時間修了▽日本語教育能力検定試験(民間試験)の合格-のいずれかが求められる場合が多い。
日本語教育能力検定試験の受験者年代別推移を見ると、一昨年度の受験者約4798人のうち、50歳以上のシニアは1225人で、25%以上を占める。10年前(平成14年度=6128人中702人、11%)と比べ、2倍以上も占有率が伸びた。
また、日本語教師養成講座を開設するヒューマンアカデミー(東京都新宿区)によると、シニア層の受講生は増加傾向にあり、1年以内に修了する短期集中コースが人気。「『地域の外国人の役に立ちたい』『海外で暮らしながらボランティアで教えたい』という人が多い。夫婦で受講し、検定試験の合格後、海外に行くケースもある」(広報担当者)という。
◆第二の人生
海外の日本語学校の場合、特に資格を必要としない学校もあり、採用条件はさまざまだ。昨年、7年間の中国体験記『中国暮らしやってみました・65歳からの日本語教師』(風濤社、2100円)を出版した東京都小金井市の柏原成光さん(73)は筑摩書房(台東区)の元社長。60歳で退職し、64歳まで風濤社で相談役兼編集者、大学の非常勤講師として教えた。「これまでとは違うことをやってみたい」と、自宅近くの中国語教室にも通い始めた。
教室の先生の紹介で、65歳(平成16年)で中国東北部・延吉市の延辺大の日本語教師として赴任。四川省綿陽市の西南科学技術大、江蘇省蘇州市の蘇州大の3大学で日本語と日本文学、作文などを教えた。
「旅行ではなく、中国に住みながらあちこちを旅したいと思った。中国語は上達しなかったが、日本語を専攻する学生が世話係として助けてくれたので、それほど困ったことはなかった」と振り返る。
柏原さんの場合、7年間も中国に滞在できたのは、前半の4年間、妻、豊子さん(71)が同行し、手作りの食事をつくってくれたこと▽ものごとにこだわらない性格▽好奇心の持続-が大きいという。
ただ、赴任先の環境は「快適」と言い難いところもある。初任地の延辺大の宿舎は共同炊事場と共同トイレ、日当たりが悪いなど条件が悪く、1年で10キロやせた。
「事前によく調べて行った方が間違いがないが、選んでいると見つからない。ただ、私が行った当時、中国の辺境に行く日本語教師は少なかったので、自分が役立つ場所があることがやりがいになった」と話している。
■ボランティアはニーズの見極めが必要
長期滞在の傍ら、ボランティアで日本語を現地の人に教え、交流をしたいと考えるシニアも多い。
海外での長期滞在情報に詳しいロングステイ財団(東京都港区)によると、ステイ先の海外で日本語を教えるサークル活動は活発に行われている。ただし、日本語を学ぶ現地の需要を十分に把握することが大切。同財団の山田美鈴主席研究員は数年前、マレーシアで「無料で日本語を学べるようになったので、自治体から日本語教師の契約を解除された」と訴える20代の日本人女性と出会った。
山田研究員は「ボランティアは良いことだが、無料で教えてしまうと若い人の仕事を奪うことにもなる。ボランティアの場合、本職で教えている人のアシストに回ると問題が少ない」とアドバイスしている。
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/life/education/snk20130405595.html