子ども服の安全性に関する日本工業規格(JIS)について、経済産業省の有識者委員会が、「7歳未満対象の服は襟首部分のひもを禁止する」などとした素案を取りまとめた。フードについても窒息の危険性があることを、参考として記した。消費者にも、安全性を考慮して商品選びをする意識が求められそうだ。
■JIS規格素案/より安全に配慮
まとまったのは、規格の基となる素案。子ども服のひもやフードが遊具などに引っかかって起きる窒息などの事故を防ぐため、学者や消費者団体、メーカー関係者らが昨秋から検討。EU(欧州連合)規格を参考にした。素案をもとに経産省は新年度、JIS原案作成委員会を設け、規格内容を確定させる。
JISは法律に基づく国の公的な規格。経産省環境生活標準化推進室課長補佐の永田邦博さんは「強制力はないが、企業が、製品の製造や販売、輸入する際の共通指標になる。JISに適合した製品が取引において求められることが一般的だ」と話す。現在、子ども服について、規格の認証機関がないことなどから、企業は、JISマークをつけず、広告や店頭表示で適合していることをアピールすることになる見込み。
素案によると、規制の適用範囲は13歳未満を対象とした子ども服で、和装やマフラー、靴などは含まれない。襟首部分のひもは、開口部のサイズ調節や、飾りのために付けられているが、窒息などの事故の要因になるとして、長さや形状を規制。特に7歳未満は禁止とする。上着やズボンの腰回りに付けられるひもも、衣類にたるみがない状態で製品から出ている長さを14センチ以下に制限する。
衣料品の業界団体は2008年、子ども服を対象に「襟首部分に引きひもを採用しないことが望ましい」などとする自主指針を定めている。その一つ、関西ファッション連合の糸井弘一さんは、「企業には消費者の安全を担保する責任がある。今回はひもの規制なので、企業にとってコスト増につながりにくい。受け入れられるのでは」と話す。
一方、フードについては、EU規格で規制対象になっておらず、JIS本文には当面盛り込まれない見込みだ。しかし、企業の留意事項を挙げる付属書に、窒息の危険性があることなどを指摘し、「フードのデザインには注意することが望ましい」と記した。公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会の田近秀子さんは、「フードの危険性が認められた。前進だと思う」と歓迎する。
有識者委員会では、消費者の責任についても意見が交わされた。安全に配慮した子ども服が普及するには、消費者が服の危険性を認識し、かわいらしさだけにとらわれず商品を購入する姿勢が求められる。委員長で産業技術総合研究所デジタルヒューマン工学研究センター長の持丸正明さんは「企業だけでなく、製品を選ぶ側、使う側も、安全な社会になるように努めてほしい」と話す。(岡安大地)
■日本工業規格(JIS)
工業標準化法に基づく国家規格。工業製品の品質を統一し、安全性を確保することなどが目的。2012年3月末現在、電子機器や一般機械、化学などの分野で、1万289件が制定されている。
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