日本人にとって「健康で長生き」の脅威となる病気や障害のトップは腰痛との分析結果を、米ワシントン大、東京大などの研究チームがまとめ、英医学誌ランセット(電子版)に発表した。自殺も上位に入っている。チームは「世界一長寿の日本人の健康が揺らぎ始めている。長く生きても病気などに苦しむ期間が延びていることを示している」と説明する。
日本の分析は、厚生労働省の人口動態調査などを基にした。平均寿命より早く死亡することで失った年数、障害を抱えて生きる年数を考慮し、病気などが健康に与える負担の程度を分析した。この手法は、死に直結しないが日常生活に支障をきたし、健康寿命を縮める病気や障害を明らかにできる。
その結果、2010年で最も負担度が重かったのは「腰痛」で、脳卒中、虚血性心疾患(心筋梗塞(こうそく)など)、肺炎、関節症などの筋骨格系障害、肺がん、自殺−−と続く。1990年の分析ではトップ3は脳卒中、腰痛、虚血性心疾患の順だった。また、自殺は若年層(15〜49歳)の死因の27%を占め、90年の16.5%から急伸、世界でも飛び抜けて高かった。
さらに、こうした脅威の背景にある最も重要な要因として「食生活」を指摘した。和食は低カロリーだが塩分が強く、果物やナッツ類が不足するなど栄養素の偏りが問題だという。2位以下は高血圧、喫煙(副流煙を含む)、運動不足、肥満だった。
チームによると、2010年の日本人の平均寿命は82.6歳だが、健康寿命は73.1歳(男女平均)。分析にあたった渋谷健司・東京大教授(国際保健政策学)は「政府は国民の健康課題に効果的に取り組んでいるように見えない。食事の改善、禁煙、腰痛対策など高齢化に伴う問題とともに、自殺予防に向けた精神疾患対策などを進めなければ、健康長寿世界一の座を維持できないだろう」と話す。【永山悦子】
◇2010年時点の日本と世界の健康脅威トップ10◇
*米ワシントン大などの分析による。「世界」は187カ国が対象。かっこ内は1990年の順位
日本 世界
1 腰痛(2) 虚血性心疾患(4)
2 脳卒中(1) 肺炎(1)
3 虚血性心疾患(3) 脳卒中(5)
4 肺炎(5) 下痢(2)
5 その他筋骨格障害(8) HIV・エイズ(33)
6 肺がん(10) マラリア(7)
7 自殺(7) 腰痛(12)
8 胃がん(4) 早産の合併症(3)
9 首痛(9) 慢性閉塞性肺疾患(6)
10 転倒(14) 交通事故(11)
http://mainichi.jp/select/news/20130328k0000m040062000c.html