2007(平成19)年度から「特殊教育」が「特別支援教育」に転換したのを機に、一般の学校における発達障害児への支援が改善されてきている。一方で、発達障害への教員の理解がある程度進んだことにより、新たな課題が起きつつあるとの指摘もある。教育ジャーナリストの斎藤剛史氏が解説する。
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特別支援教育に熱心な教員の場合、ある種の「落とし穴」に陥るケースが多いと指摘する、特別支援教育関係者がいます。発達障害に関する知識と熱意のある教員は、障害のある子どもを一生懸命に指導しますが、それが逆にクラスのほかの子どもたちとの間の溝を深める原因となり、クラスの中で「お客さま扱い」されたりすることにつながる例が少なくないといいます。この問題について、特別支援教育に詳しい兵庫県伊丹市立昆陽里小学校の拝野佳生教諭は、「発達障害のある子ども自身への『個別支援』と同時に、周囲の子どもたちとの関係性をつくる『関係支援』をもっと重視すべき」とアドバイスしています。
今の子どもは、面倒な人間関係にあまり関わろうとしません。何もしないでいれば、発達障害のある子どもと、そうでない子どもたちの間の距離は広がるばかりでしょう。拝野教諭は「学校の中で一番長い時間接している子どもたちに、障害のある子どもの支援者になってもらうことが大切です」と述べています。そのために周囲の子どもたちに働き掛ける「関係支援」が、特別支援教育における学級担任などの重要な役割だと強調します。
発達障害のある子どもと関わるなかで、ほかの子どもたちも変わっていくそうです。そう考えると特別支援教育は障害の有無にかかわらず、すべての子どもが対象となるものだとも言えるでしょう。
http://news.goo.ne.jp/article/benesse/life/education/benesse-6816.html