子どもの独立や定年退職を機に、あこがれの語学留学に踏み出すシニアが増えている。異文化に興味を持つ2人が、向学心を満たしながら海外暮らしを楽しむノウハウを学んだ。
探検隊員の大阪府高槻市の菅田博子さん(63)と、同府枚方市の太田光治さん(70)が訪ねたのは、大阪市北区の「JTBガイアレック西日本留学センター」。所長の山本尚子さんが、シニア向けプログラムのパンフレットなどを手に出迎えてくれた。
■同世代との交流も
夫の海外赴任のために長女が間もなくブラジル暮らしを始めるという菅田さんは「自分も語学を学び直したくなってきて」と話し、太田さんも「外国の人と接するたび、英会話がもう少しできたらなあと思う」。
同センターでは、18年前からシニア留学プログラムを手がけ、アメリカ、ヨーロッパ、アジアなど世界各地に毎年約100人の中高年を送り出している。
留学で気になるのは語学のレベル。「かなり堪能な人が対象なのでは」との質問に、山本さんは「初心者の方も多く参加されていますよ」。
基本はホームステイだが、敷居が高いという人には、レジデンスやホテル滞在が可能な地域があることや、添乗員付き語学研修ツアーについても説明。語学学校では、初日にレベルチェックテストを受け、実力に見合ったクラスで学べるほか、50歳以上の留学生だけで編成し、世界中から集ったシニア世代と交流を深められるプログラムがあることなどを紹介した。
■緊急サポート完備
アメリカの語学学校でクラスメートと楽しむ豊田さん(後列左端)=2011年3月、豊田さん提供 24時間365日、日本語で対応する緊急サポートサービスも完備。計画の段階から帰国まで、専属カウンセラーがマンツーマンで相談に応じてくれることなどを聞くと、2人とも安心した様子だった。
山本さんは、観光と語学研修が半々に組み込まれた「大人の遊学」や、英語教師宅で個人レッスンが受けられる「教師宅ホームステイ」など、初心者でも参加しやすいプランを示しながら、「学ぶ時間と息抜き時間のバランスを保つことも必要です」とアドバイス。同席したシニア留学経験者の豊田秀代さん(63)も「思い切って挑戦してみてよかった」と語った。
豊田さんは「自分へのごほうびに」と、定年退職後の2010年10月から1年間、アメリカの語学学校に留学。レベル分けテストでは、12段階あるクラスの下から2番目という「ビギナー」だったが、20~30歳代中心のクラスメートと、午前は必修授業、午後は選択授業や図書館での学習に励み、月1回のレベル認定に備えた。休日は、ホストファミリーと教会や小旅行に出かけ、クリスマスパーティーなどの行事も楽しんだ。
「10覚えたら12忘れる現実は厳しかったが、肌の色や文化が違っても心は同じと再認識できた」と達成感をにじませた。
■費用は1年200万円
授業料やホームステイ代、渡航費などを含め1年間の費用は約200万円。豊田さんは「掃除、庭木の水やり、冠婚葬祭の段取りなど遺言書のようなリストを作って留守宅を家族に託していった」と、シニアならではの細々とした準備についても助言した。
菅田さんは「海外経験を積み重ねる娘たちの世代がうらやましかったが、今度は自分の番という気がしてきた」と言い、太田さんも「機会があれば挑戦してみたい」と話していた。(文・渋谷聖都子、写真・奥村宗洋)
◆
■50歳以上は年々増加
JTBガイアレック西日本留学センターでは、学生や社会人など各種手配留学を扱っているが、50歳以上の占める割合は2007年に13.9%だったのが、12年には18.1%と年々増加。「7割が女性で、リピーターも多い」という。
■留学費用(渡航時期により航空運賃が変わる)の目安は、▽「大人の遊学(語学学校での英語レッスンと観光ツアー)」 アイルランド15日間で60万円前後▽「教師宅ホームステイ(個人レッスン週15時間とホームステイ)」 オーストラリア2週間で30万円前後(別途航空運賃が必要)▽「シニアプログラム(シニア対象の授業で週20レッスンとホームステイ)」 イギリス3週間で25万円前後(別途航空運賃が必要)など。問い合わせは同センター(06・6342・6500)へ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130326-00010000-yomidr-life