世の男性は30代半ばあたりから、肉体的、外見的な衰えを感じ始めることが多い。ただ、「もう老いるばかり」とあきらめるのは間違いだ。服装、髪型、話し方、仕事や生活のスタイルなどを気づかうことによって、若さを演出することは十分できる。この連載では、IBM出身の恋愛コンサルタントである青木一郎氏が、頑張らずに若さを保つためのテクニックを、分野別に紹介する。
青カビのような臭い
年をとると気になり始めるのが「加齢臭」。この“気になり始める”のは本人ではなく、周りの人たちから、というのがありがちなケースです。
たとえば、私の女友達は「最近、ダンナが“おじいちゃん”と同じ臭いがしたのよ~」と嘆いていました。40歳を過ぎたダンナが、おじいちゃんのような古い脂や青カビのような臭いがしたというのです。一方、当の本人はまったく自覚なし。指摘されたとき「そんなことあるかよ」と認めようとしなかったそうです。
これは怖い話です。人は自分の臭いに鈍感です。つねに漂っている自分の臭いに慣れきってしまうからです。しかし、周りの人は敏感に察知してまゆをひそめているかもしれないということ。だから注意が必要です。特に、「加齢臭だって? 俺には関係ないよ」と思っている30代の人たちに警鐘を鳴らしたいと思います
30代特有の加齢臭がある
加齢臭は皮膚の毛穴から出る皮脂が原因になります。この皮脂の中に含まれるある酸が酸化した結果、加齢臭の元になる「ノネナール」が作り出されるのです。このノネナールは「脂っぽくて青臭い、枯れた」臭いといわれていますが、40歳を過ぎた頃から目立ち始め、年齢に比例して増加します。
ある研究機関が行った官能テスト(実際に、臭いをかいで評価するテスト)では、40歳すぎから臭いが漂い始め、その後は年齢に比例して増加。60代で急増し、40代の約3倍の人に加齢臭が認められるようになるそうです。
この結果だけ見ると、30代の人に「ほ~ら、俺らには関係ないでしょ」といわれてしまいそうです。しかし、30代には30代特有の年齢的な異臭、つまり加齢臭があるのです。
加齢臭の原因は先に述べたとおり皮脂にあります。この皮脂の量が最も多いのが30代。そして、30代の皮脂が酸化すると「ペラルゴン酸」という臭いの原因物質に変化します。これは「古い食用油」のようなムッとする臭いを発します。
30代でも40歳以降でも、加齢現象によって臭気が発生するメカニズムは同じ「皮脂が酸化すること」です。その結果、30代は「ペラルゴン酸」に、40代は「ノネナール」という異臭成分を発生させます。成分は異なりますが、異臭は異臭。しかも、同じ「脂っぽい」異臭がするのですから、決してひとごとではないのです。
ここで、興味深い調査結果を紹介しましょう。臭覚心理学の第一人者であるレイチェル・ハーツ博士が行った実験結果。男性は「外見」で恋人を選びがちなのに対し、女性は「匂い」で選ぶ傾向が強いそうです。これは男性に対する好感度に「匂い(臭い)」が大きな割合を占めていることを意味します。
だから、恋愛シーンだけでなく、仕事場でも臭いに注意すべきだと思ったほうがいいでしょう。もし、興味があれば、ネットで「上司+加齢臭」のキーワード検索をしてみてください。たくさんの女性たちの悲痛な悩みとともに、加齢臭を放置することが、いかに職場環境を悪化させているのか理解いただけることでしょう。
加齢臭防止グッズを活用せよ
では、私たちは加齢臭にどう対処したらいいのでしょうか。臭いは元から断たなきゃダメといいますが、そういう意味では不摂生な生活習慣を改めるべきという専門家がいます。また、男性ホルモンの低下が原因という説もあり、筋力を高める運動で体質改善をするべきという人もいます。
しかし、こうした抜本的なやり方は時間がかかるので、文明の利器を利用するのが手っ取り早いし効果的です。人を宇宙に送り出せる時代だけあって、加齢臭防止グッズもさまざまなものがそろっています。「加齢臭防止の下着や靴下」「加齢臭防止の石鹸やボディソープ」などなど。
そうした中、最も効果的で最も見落としやすいのがシャンプーです。なぜなら、最も加齢臭を発散するのは頭だからです。加齢臭の原因となる皮脂を分泌する皮脂腺が最も多い場所が頭皮。おなかに比べて約30倍、背中に比べても約5倍もあります。また、体は衣服で覆われているので臭いにくい一方、頭はすっ裸の状態で相手の鼻に近いこともあり、加齢臭散布の絶好の媒体となってしまうからです。
また、洗髪時には「髪の毛」を洗うという意識が強い人が多く、加齢臭が滲み出る「頭皮」そのものを洗う人が少ないこともあって、加齢臭対策は「まずは頭から」ということを私は声を大にして申し上げたいと思います。
ちなみに、加齢臭対策グッズを買うのは主に主婦の方だそうです。これはまさに内助の功。現代版 山内一豊の妻じゃないですか(涙)。それとも、ただ単にダンナの加齢臭がイヤなだけ?
オジサン的生活を送ると、女性にも加齢臭が
加齢臭というとオジサン特有のものと思われがちです。しかし実は、女性も加齢臭を発散しています。社会進出が目覚ましい女性たちが「とうとう俺たちオヤジの聖域に足を踏み入れたのか!」というわけではなく、体のメカニズム上、そうだということです。
前述のとおり、皮脂の酸化によって加齢臭が発生する肉体的なメカニズムは男女問わず一緒。だから女性にも加齢臭があるのです。女性の加齢臭が目立たないのは、皮脂の量が男性より少ないからです。しかし、生活習慣によって皮脂は増大します。具体的には、肉食過多な食事や睡眠不足などのストレスが皮脂を増大させてしまうのです。生活習慣病の原因と大きく重なるということです。
仕事でストレスをため込んで、「もう、やってられないわよ~」と焼き肉をヤケ食い、ビールをがぶ飲み。などなど、オジサン的な生活を送っていると、女子もオジサンと同じレベルの加齢臭を発散してしまう、文字どおり「オヤジ臭くなる」というわけです。そのうち、加齢臭もお互い様という時代が来るかもしれません。
「オヤジ臭さ」根絶も必要不可欠
いや、しかし、そんな時代は来ないでしょう。女性は、男性に比べてデオドラントに気を使っています。たとえば制汗剤をよく使います。そうでなくても、ちゃんと洗顔して化粧水をパタパタと肌につけることや、化粧落としを使うことで、肌が清潔に保たれているという側面もあります。
私は、それ以上に「態度」そのものにも男女に差があると思うのです。
加齢臭は、資生堂が2000年に発見し命名したものです。当時、大きな話題になりました。「ついに発見、オヤジ臭さの原因が科学的に究明された」という特集をテレビで見た記憶があります。
この「オヤジ臭さ」には、加齢臭だけでなく、オヤジ臭い言動や態度が含まれているのではないでしょうか。おしぼりで顔をふくとか、オヤジギャクを連発して周囲を凍らせるとか。だからこそ、「ついに、オヤジ臭さの原因物質を発見」と面白おかしく騒がれたのではないかと思います。
加齢臭防止グッズも重要、生活習慣を改めるのも効果的。でも、態度そのものを見直すことも「オヤジ臭さ」根絶には必要不可欠ではないのかと、自戒の念を込めまして、ここに提言したいと思います。
http://toyokeizai.net/articles/-/13369