[ カテゴリー:医療, 生活 ]

脳機能と認知症…脳を知り 患者を理解

性的な問題行動も

ものを覚えたり、判断したり、周囲と意思疎通を図ったりするのが難しくなる認知症。社会の高齢化とともに患者数は急増し、300万人を超えた。中には、ささいなことで怒り出したり、卑猥(ひわい)な言葉を投げかけたりして、周囲を困惑させる患者もいる。脳科学の視点から認知症を客観的にとらえることで、患者をもっと深く、優しく理解できるかもしれない。

認知症の診療に長年携わる勤医協中央病院(札幌市)名誉院長の伊古田俊夫さんが注目するのは、「社会脳」と呼ばれる脳の機能だ。他人の喜びや悲しみを表情から感じとる、自分の怒りや欲望を抑える、自分の言動を振り返るなど、社会生活を円滑に営む上で欠かせない。伊古田さんは、社会脳の機能低下が認知症の症状につながる、と考えている。

社会脳で重要な役割を果たすのは、脳の「前頭連合野」という部分だ。大きく分けて〈1〉論理的な思考や課題の遂行を担う「前頭葉外側面」(知能)〈2〉感情や欲望を制御する「前頭葉基底部」(理性)〈3〉周囲への共感に関わる「前頭葉内側面」(共感と社会性)の三つの領域がある。

それぞれの領域の機能が低下すると、「ミカンとリンゴの共通点(果物)がわからなくなる」「食べたいものを見つけると、店の中でも食べてしまう」「周囲の人を平然と無視する」などの認知症の症状が表れる。ささいなことで怒り出す「易怒性(いどせい)」は〈2〉の機能が低下しているためで、脳をSPECT(単一光子放射断層撮影)で調べると、〈2〉の領域の血流が低下している。

伊古田さんは「脳の障害で体が麻痺(まひ)するのと同じように、すぐに怒るのだと思えば、介護者も少し冷静になれる。症状が進んでも、ユーモアや優しさは残る。認知症の治療薬『メマンチン』がこうした症状の改善に役立つ」と助言する。

もの忘れとともに、認知症で最も多いのは、時間や場所の認識があやふやになって、自分が何をしているのかわからなくなる「見当識障害」だ。定年退職して何年もたつのに、「仕事に行く」と背広を着て出ていこうとするような症状だ。

何もしない時でも脳の特定の部位を結ぶネットワークは活発に働いている。自分を振り返り、反省して、将来のあり方を考えているようだ。見当識障害は、このネットワークの働きが低下していると考えられる。

頻度は低いが、悩みが深刻なのは性的な問題行動だ。卑猥な言葉を投げかけたり、体を触ったりするケースは、患者の人格と結びつけて考えてしまいがちだ。MRI(磁気共鳴画像)で患者の脳を調べると、扁桃体(へんとうたい)と呼ばれる部分が萎縮していることが多い。扁桃体に萎縮があると、性的な欲求が病的に高まることが知られており、脳の変化が症状を引き起こしている。

在宅医療介護者向けに伊古田さんの講習会を企画した東苗穂病院(札幌市)の看護師、葛西千鶴子さんは「認知症と『社会脳』のつながりを知り、患者をより客観的に見ることができ、家族にも助言しやすくなった。認知症の初期症状にも早めに対応できる」と話している。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130322-00010000-yomidr-hlth

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