[ カテゴリー:生活, 社会 ]

生活保護…自立へシフト 96%世帯で減額

「最後の安全網」と言われる生活保護制度が転換期を迎えた。政府は、生活保護予算を新年度から削減する方針を決定し、生活費にあたる「生活扶助」を3年かけて約670億円(6・5%)減らす。ほとんどの世帯で今年8月から生活扶助費が下がるため、自立に向けたきめ細やかな支援の重要性が増す。生活保護は、様々な低所得者対策の基準にも連動しており、影響をいかに少なくするかが課題となる。

■「ゆがみを直す」

「民主党でも自民党でも、(一般の低所得世帯に比べて)生活保護の基準が高いのではという議論があった。今回の見直しは、そうしたゆがみを直すということが根本にある」。2月7日に開かれた衆院予算委員会。田村厚生労働相は、長妻昭元厚労相から引き下げの理由を問われ、こう強調した。

生活保護の給付額は、国民の消費の伸びに合わせて生活扶助の給付額を毎年改定する方式が採られている。引き下げが行われたのは、1950年の制度開始からこれまでに、2003年度(0・9%)と04年度(0・2%)の2回。それ以降はデフレ傾向が続く中、基準が据え置かれてきたため、「一般の低所得世帯に比べて生活保護費の方が高い」と指摘されるようになった。

このため07年から5年に1度、給付水準が消費実態とバランスが取れているかを厚労省の専門家会議が検証することになった。政府が生活扶助費の削減を決めたのは、11~13年の検証で「生活扶助は、子どもがいる多人数の世帯ほど高めで、高齢の単身世帯は低め」という結果が出たためだ。

今回の見直しでは、受給世帯の96%が削減対象となる。下げ幅が大きいのは、子どもがいる世帯や若年層で、都市部に住む夫婦と子ども2人の世帯では、現在の22万2000円が15年度には20万2000円と2万円減る(=表=)。

同省は、生活扶助以外にも、住宅費の補助(住宅扶助)や、18歳以下の子どもがいるひとり親世帯に上乗せして支払われている母子加算についても生活保護の基準を見直し、「適正化」を進める方針だ。特に住宅扶助は、保護費全体の約15%を占め、医療扶助、生活扶助に次いで3番目に多い上、5年間で1・5倍に増えており、見直しの必要性が指摘されている。

■支援計画策定

一方で、受給者の増加を食い止める施策については不十分だとの指摘もある。

受給者はリーマン・ショックのあった08年以降、年10万人以上のペースで増え続け、昨年11月には約214万人に上った。特に働けるのに仕事のない世帯の受給が増えており、受給にいたる前の就労支援などが大きな課題となっている。

このため厚労省では、新法を作り、一人一人に合わせた支援計画を作る総合的な相談窓口を自治体に設け、生活リズムが乱れている人には比較的軽度の労働をする「中間的就労」をしてもらう構想だ。また、生活保護法も改正し、働いた方が受給で有利になる仕組みを取り入れる一方、不正受給を防ぐために罰則の引き上げも検討するとしている。

ただ、新法制定や法改正のめどは立っていない。相談窓口などを全国に展開するための予算が確保出来るかどうかも不透明だ。

和歌山県で中間的就労に取り組む社会福祉法人「一麦(いちばく)会」の柏木克之執行理事は、「困窮者は金銭面だけではなく家族関係など複雑な問題を抱えており、専門的知識のある民間団体の協力が不可欠。民間が長期的に活動を続けられるような国の支援も必要だ」と指摘している。

■最低賃金、就学援助に影響も

生活保護の基準は、最低賃金や住民税の非課税限度額など様々な低所得者対策と連動しており、影響が懸念されている。

「このまま最低賃金が上がらなければ、生活できない」。横浜市内の女性(51)はため息をつく。最低賃金法では、最低賃金を決める際に生活保護の水準にも配慮することと明記されており、保護基準が切り下げられれば、最低賃金の底上げも難しくなる。

女性は大学生の長男(21)、長女(20)と暮らす。収入は月約13万円。自治体の窓口に相談した際、条件がそろえば親子で26万円近い生活保護を受けられると聞かされた。「生活保護の方が楽なのではと正直迷うこともある。でも、働く意思のある人がまっとうな賃金で働き、生活するのが普通ではないでしょうか」と話す。

困窮世帯の子どもに教材費などを支給する就学援助制度にも影響が出そうだ。支給対象者は、生活保護の基準を目安に各自治体が決めており、保護費の引き下げで打ち切られる可能性もある。国は、なるべく影響を出さないよう呼びかけているが、各自治体がどのような判断をするかは不透明で、地域ごとにばらつきが出ることも考えられる。

厚労省生活保護基準部会で委員を務める関西国際大学の道中隆教授(社会保障論)は、「就学支援の打ち切りは、子どもへの『貧困の連鎖』につながる恐れもある。国が自治体に対し、影響が出ないような支給基準を示すべきだ」と指摘している。(社会部 小泉朋子)

■生活保護制度

憲法25条に規定された「健康で文化的な最低限度の生活」を実現するため生活保護法で定められた公的扶助制度。生活費などを支給するほか、医療・介護サービスも提供し、自立を促す。高齢化や景気低迷の影響で、受給者は2011年に200万人を突破。費用は3兆7000億円(今年度予算ベース)と、この5年で1兆円増加した。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130309-00000302-yomidr-hlth

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