「トイレに流せる」とうたったトイレクリーナー(トイレ掃除用シート)の中に実際には水に流したときに溶けないものがあり、消費者庁が事業者に改善を促している。6月頃までをめどに改善されない場合は、景品表示法による措置命令を行うという。現在、店頭に並ぶ商品には「流せる」との表示がなされていても水に溶けないものもあり、利用者は注意が必要だ。
◆品質基準なし
トイレクリーナーは、トイレの便器やタンク、床などの拭き掃除に用いられる専用シート。
消費者庁によると、全国の消費生活センターなどに「トイレクリーナーが水にほぐれない」「水洗トイレに詰まった」との相談がこの10年間で32件寄せられている。平均で年3件と多くはないが、同庁表示対策課・上席景品表示調査官の南雅晴さんは「水洗トイレが詰まって使えなくなるのは生活に大きな支障を生じる。たとえ数件でも、『トイレに流せる』と表示があるのに溶けずにトイレに詰まるのは問題」と話す。
トイレクリーナーには工業標準化法に基づく日本工業規格(JIS)がない。このため、事業者はこれまで独自に商品を製造・販売してきた。一方、水洗トイレメーカーは、水洗トイレに便などの汚物とトイレットペーパー以外のものを流すことを「禁止」している。
同庁は、トイレクリーナーをトイレに流す場合、トイレットペーパーと同程度の「ほぐれやすさ」が必要と考え、市販のトイレクリーナー十数点について、トイレットペーパーのJISによる「ほぐれやすさ」の品質試験を実施。その結果、トイレットペーパーと同じようにほぐれたのは2点だけだった。
同庁は昨年12月下旬、ホームページ(HP)で、「ほぐれやすさの試験をクリアしないトイレクリーナーを『トイレに流せる』『水にほぐれる』と表示するのは景品表示法の優良誤認にあたる」と警告した。
◆とまどう業者も
平成元年から「トイレクイックル」を製造・販売する花王(東京都中央区)は「トイレクイックルはトイレットペーパーJISの品質基準を満たしており、トイレに流せる商品です」とのお知らせをHPに掲載している。同社広報部は「お客さまからの問い合わせに備えた。クイックル発売時はトイレットペーパーのJISはなかったが、当時からほぐれやすさを確認して商品にしている」と話す。
一方、突然の警告に「これまでお客さまからトイレクリーナーが詰まったという苦情を受けたことがないのに」と、とまどう事業者もいる。
マンションなどでは一戸一戸のトイレで詰まらなくても、共用の配管にクリーナーが詰まっていることがある。東京都内でマンション管理人をしている男性によると、配管詰まりの検査時にトイレクリーナーとみられる大きさの紙状のものが溶けずにそのままの形で詰まっていたことがあったという。
住宅設備機器大手のリクシル(江東区)の広報部は「除菌シートや赤ちゃんのお尻拭き、ティッシュペーパーがトイレに詰まっていたという報告もある。トイレットペーパー以外の紙は流すと故障の原因になるので流さないでほしい」と呼び掛けている。
■景品表示法の優良誤認
誇大広告などで商品やサービスの内容が実際以上に優れていると消費者に誤解させること。同法は昭和30年代、「牛肉大和煮」と表示していた缶詰の大部分が馬肉や鯨肉だったニセ牛缶事件を契機に施行。公正取引委員会が所管していたが、平成21年に消費者庁に移管された。これまでに、台湾産うなぎを「国産」、ベニズワイガニのカニ肉を使っているのに「ずわいがにコロッケ」などと表示していたケースに措置命令が出されている。
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/life/medical/snk20130304506.html